コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 【Re:make】 ( No.61 )
日時: 2012/09/30 11:15
名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: TZln3PE9)

「やいやいやいやいてめェら?黙って聞いてりゃなんだ?その言葉使いは。小学校でどんな教育受けてきたんだおめェらはよォ!?」
鋭く赤い輝きを見せる眼を細めながら空土は木刀を倒れ伏している花火の首元に付けた。いつものちゃらんぽらんな雰囲気は今は全く見えない。

「年下の女の子を・・・木刀で吹っ飛ばす人に言われたくないッスよ・・・・。」
木刀の切っ先を片手でつかみながら花火は呻く。「大義も何も無いッスよ・・・。副部長としての前に人間としてどうかと思います・・・・。」
「大義とか道理とかそんなん知ったこっちゃねェさ。くそ面倒な理屈は今の感情にはいらねェよ?キレたから吹っ飛ばす。ただそれだけだ。」
「とんだジャイアニズムだ。話ンなんないな・・・。」
壁に身を預けながら花火はゆっくりと立ち上がった。無理をしているのか、口に笑みを浮かべている。

———というかこのくだりを眼前で目にしても何も動かずに突っ立っている僕はどういう立場なのだろうか。

「その言葉使いもだよ。花火。」
花火の手のひらから木刀を抜き、それを上に振りかざした。
「おめェら全員集中治療室行きだ。覚悟しろ——————」」」」

すると、直後、僕の目の前を何かが猛スピードで吹っ飛んで行った。
「「「!!!」」」
なんだ今のは?鳥か?いや、そうだとしたら大きすぎる。確実に「飛んで」いたので人間ではない。結構な質量をもった物体が飛んできたのだ。表現するなら・・・椅子、いやそれより少し大きいほどだったと思う。

「ぬぶうふぉ!!?」
飛んできた物体は空土の脇腹にぶち当たり、彼の身体も共に数メートル吹っ飛んだあと、近くにあった台車の山に突っ込んでいった。
「——後輩、しかも女に手え出すって相当の外道だぞ?負け犬空土よぉー。」
「・・・って拳正さん!??」

制服を肩に担ぎ、Yシャツ姿になった拳正が意地悪そうに空土を見下ろしていたのだ。
自らの後ろに大型の傘立てを無造作に置きながら。




「なァ?ヒロ。今おめェに俺ってどんな風に見えてンだ?」
金属の山から空土はくぐもった声を出した。
「さっきの亦紅さんそっくりです。」
「はっ!やっぱそうか!」

ガラガラと台車の山を崩しながら笑いながら体を出した。肩をだるそうに回すといつものごとく制服の裾をはたはたと叩いた。

「・・・ほう、やったな博人。凄いじゃないか。」
拳正はさも面白そうな声を上げ、僕の肩に手を置いた。

「何がです?」
「空土の野郎に名前略されるって結構凄いことなんだぜ?正真正銘認められるというか。たぶん年下じゃ初めてじゃないのか?」
「ちげェよ。ムツの野郎がいんじゃねェか。」
「そうだったか?小学校の頃のことなんて忘れたんだがな。」

「・・・ちょっと待ってくださいよ。」
僕は話を止める。「えっと、隼威さんと遊楽さんはちゃんと略されてますよね。」
「そだよ。」
「だったら・・・・いまだに普通に呼んでる黄色さんって・・・。」
「そういうことだ。ってかこんな奴どこを尊敬すればいいんだよ。そこが分かんねェよ。」
「ほ〜それはおもしろいことをきいたね〜。」
黄色はいつもどおりフワフワと宙に浮かぶ。「どこがわるいのかおしえてもらいたいね〜なおしてくからさ〜。」ちょうど今ですよ今。

「・・・で?痛ェじゃねェかケン。いきなり傘立てなんか投げて俺がアタマ打ったらどうすんだよ。」
空土はおおげさに脇腹をさすって見せる。
「一年ごときに本気だした手前の方が何やってるんだ。流石にあの斬撃は俺でも見えなかったぞ。」
「だろ?俺の腕はなまってはいねェさ。だが言っとくわ———」
空土は腰に手を当て人差し指で拳正を指す。
「今のは所詮七割だぜ。もっと速くできるのは確かだぜ!」
「ほう・・・・。手前って幸せな奴なんだな・・・。」

拳正は苦笑いとともに溜息を大げさについた。そしてくるりと踵を返す。

「あんまり遅いからなんかトラブルあったんじゃないかって見回りに来てたんだよ。亦紅の目撃情報もあったしな。すると、空土が不埒な事をしてたから・・・・軽くぶつけに来ただけだ。とっとと進むぞ馬鹿ども。」

一人歩きだした拳正の後ろ姿をゆらりと一瞥し、にやりと笑うと首に手をまわし、
「チッ、せっかくガキどもにヤキ入れる所だったのになー。」と呟いて拳正の後を追った。
一年全員満身創痍だ。皆壁によしかかるようにして立っている。こうして見ると女子が微妙にかすり傷が少ないのは・・・気のせいだろう。

もう流石に懲りただろう。そう思い、足元に目を向けた。が、口を一文字に結んだ花火が空土に走り寄っていくのが見えた。・・・まさか。

「このままで終われるかよ———ッ!!」
「ひどぅば!!」

花火の両足ドロップキックがきれいに空土に炸裂した。