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- Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 【Re:make】 ( No.65 )
- 日時: 2012/10/08 10:42
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: kG6g9hX2)
「お前らも知ってる通り、剣道部3年には眉唾のおかしなチカラが宿っててよぉー・・・。」
僕の前に現れた壁は低い呟きを口からほとぼらせる。
「黄色は強力な念動力、遊楽は正確な判断力、んでもう一人紅一点がいるんだが、そいつも意味わかんねー能力持っててな・・・。」
大きな深呼吸と共に壁・・・・王生隼威は次の言葉を吐き出す。
「まあ、俺も持ってるんだよなぁ・・・。立派なチート能力をよぉー・・・。」
隼威はどこか悲しそうな顔をして、こちらを振り向いた。そして、自らの指でつまんでいるものを示して見せる。黒くて、平べったくて、鋭くて星形。
——手裏剣。手裏剣が幾枚も重ねられ、指に挟まれている。見ると、飛んできている手裏剣は皆無だった。
「ま、簡単に言えば、強制的に言うことを聞かすもの。今日びの漫画のラスボスでも見ないようなチート能力。まあ、部長だった俺におあつらえのモンだよ。」
ゆっくりと言い終わると隼威は掴んでいた手裏剣を後ろ手にポイっと投げた。それらが地面に落ちるときに冷たい金属音が鳴った。
「ひゃっはー!初耳だな。でもどっか行ってろよ。俺ー空土のくそ野郎をぶっ殺したいだけだからだな。隼威さんよぉ・・・。」
「・・・そうだな。あン時にお前にこの変なチカラ使ってりゃお前はいろいろ曲がらないですんだかもな・・・。だが退け。馬鹿。」
「はー、意味分かんねーや、偽善者ごっこは他でやれ・・・・」
【帰 れ っ て の が 解 ん ね え の か オ ラ】
瞬間、思わず身震いがした。隼威が放った言葉がそのまま研磨された針となって僕を射貫いていくような気さえした。視界がぐわんぐわん揺れる。
この言葉を直接くらった亦紅はそれ以上の衝撃だったろう。彼の足が細かく震え、瞳孔が歪んでいくのを僕は見逃すことはなかった。
うつろになった彼の眼が空土をとらえるとほんの少し『口角を上げ』フラフラとした足取りで僕たちへ向かってくる。
「ひっ!」
まだ包帯を巻いている友美が怯えた声を出し、花火の後ろに隠れたが、
「大丈夫だ。フルパワーを出したからな。ほんッッッのわずかに自我を保ってる程度だ。心配ないぞ。」との隼威の声を受け、少し花火から離れた。
隼威の言うとおり、亦紅は僕らの元をあっさり通り過ぎ、やはり千鳥足でしばらく歩いていくと校門をまたいでいった。それからもしばらくは皆校門を見送っていた気がする。が、やがて、空土が薄笑いと共にくちを開いた。
「おめェにんな隠されたモノがあったとはな。おめェはこのガッコをめだかボックスにでもしてェのか?」
「しょうがないだろ。隠してたんだから。」
隼威は言った。微妙に会話が噛み合っていない。
「まあ、たまぁーに発動してたんだけどな。たまーに。」
隼威は人差し指と親指で米粒ぐらいの大きさを示して見せる。本当に僅かだ。空土はポンと手のひらを打った。
「なるほど。道理で剣道の試合ン時、ケンの『進撃の巨人』みてェな怪力も俺の超音速カウンターも効かねェはずだ。」
「・・・・そりゃそーだろ。年下とはいえお前らのチート的な攻撃をモロに喰らってりゃいくら俺でも死ぬわ。——とまあ、亦紅のせいで止まってた最後の試練やるぞー!ほら、並べお前ら。」
隼威の言葉に皆はっとしていた。表情を引き締めるとそそくさと横一列に並んだ。こういう時はかなり早い。僕は花火の横に並んだ。
「なあ、隼威兄ぃ、やっぱこれをしなきゃならないのか?」
拳正は困ったように腕を組んでいる。空土を見ると笑いをこらえているように下を向き、震えている。
「そりゃこれが一番最後って決まってンだから仕方ないだろ?伝統だ伝統。人生には運がどうしても必要なシチュエーションがあるんだ。」
今の会話から、この試練が運を使うものだと理解できた。でも・・・一体?
「伝統っつったって・・・。調べてみたら3年前のキャプテン・・・空土の兄ちゃんの桜而さんがこの行事作ったって話じゃねーか!?」
それに驚いたのは空土だ。ただし、驚くポイントは少し違い、
「おめェなんで俺の兄貴の名前知ってンだ?俺のストーカーかおめェ。」
「んなわけあるかぁ!!何回か会ったことあるだろ!しゃべったことだってあるし!」
「すまねェな。俺ァ嫌な思い出は忘れる主義なんだ。」
「都合のいい頭だな!!ってか手前の兄貴と俺がしゃべったのがなんで嫌な思い出なんだ。」
「嫌いな野郎が百花繚乱だろう。」
「手前ぇぇぇええ!!!」
右額に青筋を浮かべ、掴みかかろうとする拳正。その腕を空土はひょいと避け、足をかけた。
「・・・ったく、お前らは仲がいいのか悪いのか、相性がいいのか悪いのか、意気があってるのか合ってないのか。よくわからないな・・・。」
「全部後者だコノヤロウ!!」
「ほらー1年ら!試練始めるぞこら!」
「ガン無視かコノヤロウ!!」
見るといつの間にか拳正は空土によって鎖でぐるぐる巻きにガンジガラメにされていた。心理的な描写ではなく、本当に縛られている。
「ホントおめェって直線的だな。受け流せさえすれば楽勝だぜ。」
そう言う空土も所々に青あざができている。この短時間で何があったし??
「——あーすっきりした。わー、相変わらず空土と拳正は仲良く喧嘩してんじゃん。」
ひょいと隼威の脇に出てきたのは・・・・遊楽。そういえば途中からいなかったような気がするな・・・。
「このやり取りを喧嘩と断定できるお前ってすげえよ・・・。」
と隼威は溜息をついた後、「遊楽。お前、どこ行ってたんだ?亦紅騒ぎのとき見なかったが。」
「へ?騒ぎっていつのこと?木に吊るされたときはすぐそばにいたよ。」
「そこじゃねえよ。・・・まあいい。どこ行ってたんだ?」
「ハハ!何を隠そう!僕は今までカミサマに便りを出s「なるほど。便所に行ってたんだな。」あっさりと言うね・・・。」
いつも通りのやり取りを見て、僕は少し和んだ。このゆるゆる感が僕にはちょうどいい。
「んで、最後の試練は終わったのかい?」
「・・・いや、まだですね。」代表して僕が答えた。
遊楽はふーんと鼻で息をした。そしてとびっきりの笑顔で言う。
「じゃあ始めようか!最後の試練、じゃんけんを!!」