コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *歌えない人魚姫* オリキャラ募集中 ( No.14 )
日時: 2012/05/28 22:25
名前: マリン ◆eVFVquZhMQ (ID: iAb5StCI)

第二話           なにもかも、あの時  前篇



あれからお城へ戻ってきたが、やはり誰もいない。

メイの言うとおりだ。
私は……ここに住んでる資格もなにもない。
だって……、



私は、『お姫様』じゃないから。
王であるお父様と女王であるお母様に捨てられちゃ、お姫様でもなんでもない……。

「…………」

シーンと静まり返る広間。
誰もいない。

……ほら、まただ。
あの頃の記憶が昨日のことのように蘇る。

それは私が五歳だった時の話。
私が……、

     まだ笑えた頃。

—回想—

「ナナ!」

「…………!」

声は出なかったけど……誰もそんなこと気にしなかった。

「お友達がきてるわよ?」

優しいお母様とお父様、それに従業員さんに囲まれてすごく充実した日々。

「…………?」

「メイちゃんとウミノちゃんよ。」

『誰?』と言おうとしたのが分かるのか、お母様は笑顔で言った。

「…………!」

メイとウミノちゃんは大親友。
二人ともすごく優しくて……私を色んな所に連れてってくれた。

外に出るとメイ達が魚と遊んでいた。
私がメイ達に向かって手を振ると、気づいたのか振返してくれた。

メイは明るくて活気のある……ちょっと高飛車な女の子。

「ナナ! 今日はね、人間の居る場所行かない?」

に ん げ ん ?

何それ……?

首を傾げるとメイが自慢げに言った。

「知らないの? 人間っていうのは足が生えてて歩くのよ!」

「こら! メイ。
 自分だってお兄ちゃんから教わったばっかのくせに自慢しないの!」

ウミノちゃんはみんなのお姉さん的存在。
実際私より七歳年上だ。

「ウミノちゃん、何でそんなこと知ってるの?」

「メイ……私の知らないことはないのよ?」

「何それ」

メイちゃんが少し引き気味に言った。

私は会話に混ざることができない。
それでも話を聞いてるだけで楽しかった。

「まあ……いいや。
 ナナ、人間のいるとこ、行く?」

コクンと頷き、メイとウミノちゃんの手をとった。

「じゃ、行こうか!」

かなり長い時間上に昇って泳いでいた。

「…………」

つ、疲れた……。

「ナナ! 太陽が見える!」

メイがいきなり大声をあげた。

たいよう……?

「ホントだ! すごく明るい!」

太陽は真っ赤だった。
夕方になっているのか……。

そして……、浮上。
初めてみる外の世界。

「綺麗……」

水平線に夕日が沈んでいく。
聞いたことはあったけど実物を見るのは初めてで、すごく感動する。

暫くすると日が沈み切り、真っ暗になってしまった。

「ねえ、」

「?」

「もう少し砂浜に寄ってみない?」

この発言がいけなかった。
メイ……悪気があって言ったわけじゃないって分かってるけど。

好奇心とは時に恐ろしい。

「駄目よ! もし見つかったら……、」

「いいじゃん、ナナもいいと思うよね?」

少し迷ったが好奇心に勝てず、頷いた。

こうして……危険があると分かっていながら行ってしまった。

『……! ……!!』

何か声がする……。
人がこっちを指差してる?

何? 遠くてよく見えない。

「いけない!」

ウミノちゃんがいきなり叫んだ。

「ナナ、メイ! 今すぐ逃げなさい!」

「何で?」

メイが不思議そうに尋ねた。

「何でもよ! 殺されたいの?」

「殺されたくはないけど……。
 でも……。」

「ナナ! 何とか——、」

言い合いをしているから後ろで起こっている事に気づかず、いきなりの衝撃が走る。

なんか背中にぶつかった?
後ろを振り向くと大きな白い船。

「何、これ。」

「〜〜っ! まずいわ!」

上から網が降ろされてきて、私がそれを触ろうとした瞬間——……。

「駄目よ!」

ウミノちゃんが私の手を叩いて網から払いのけた。
そのせいでウミノちゃんの手が網に絡まり、解けなくなってしまった。

「ウミノちゃん……?」

心配になり、メイが問いかけた。

「ナナ、メイ。
 今すぐここから逃げなさい。」

「でもウミノちゃんが……、」

「いいから逃げなさい!
 これは命令よ!」

「ひっ……」

ウミノちゃんが怒ったので怖くて……私達は急いで海に潜った。

最期のウミノちゃんの言葉、

「ナナ、メイ……大好き」

それだけ聞いて。