コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *歌えない人魚姫* ( No.3 )
- 日時: 2012/06/30 03:28
- 名前: マリン ◆eVFVquZhMQ (ID: iAb5StCI)
第一話 魚になりたい
私は岩に縛り付けられて、虐められていた。
少し虐めっ子と目が合うと……、
「赤魚が俺様に逆らおうってのか?」
……赤魚。
それは私のあだ名。
何故かというと……尾びれが紅いから。
「何とか言えよ、赤魚。」
「…………」
何も言えないよ、私。
「カイトー、こいつ声出ないんだよ?
言えるわけないじゃん! キャハハ」
メイ(虐めっ子)がキンキンと煩く響く声で笑った。
「ねー、お姫様」
お姫様……。
そうか、私人魚姫だったっけ……。
暫く忘れてたことだった。
城に帰っても誰もいないから……。
「ああ、あんた親に捨てられたから姫じゃなかった?
でもお城に住んでるわよね。
あの城、あんたの物でもなんでもないのに。」
「…………」
「はあ……、泣かなくなっちゃったしつまんないわね。」
ため息をはきながらメイが私から離れた。
「メイ、今日はいいものがあるぞ。」
「ん? 何カイト。」
カイト(虐めっ子)がメイに何か耳打ちしている。
途中メイがすごく明るくて……それでいて黒い笑みを浮かべた。
「なるほど、それは面白そうね。
赤魚が大切にしてる物を奪うのは気持ちがいいでしょうし……。」
何を言ってるのか聞きとれない。
「……で、道具持ってきてるの?」
「安心しろよ。持ってるから。」
どうやら話が終わったらしい。
「赤魚!」
今度は何だろう。
殴られるのかな?
それなら慣れてるからいいや。
メイが私に近づいてくる。
……鋭く光る、ナイフを持って。
「……赤魚。」
私を殺す気なのかな……。
やだなあ、怖いなあ。
でも楽になれるならいいかなあ。
「聞いてるのかしら? 赤魚。」
「…………」
メイの話なんて聞きたくもない。
「まあ、いいわ。
今から……」
ブチッ
「アナタの髪を切る。」
メイが言い終わる前に金色の髪が飛び散った。
髪は砂の様に海に溶けて消え、跡にはなにも残らない。
ナナの髪は何故か切ると水に溶けてしまう。
「…………」
何が起こったのか把握できなくて暫く茫然としていた。
「キャハハ、ご自慢の髪、切れちゃったわねえ。」
メイはまたキンキン声で笑った。
『髪、切れちゃった』
その言葉が頭の中を児玉する。
「…………!」
髪……! 私が唯一褒めてもらったことのある、髪……!
切れたなんて嘘でしょう?
自分の髪に触れてみると自分の身長ほどあった髪が胸元までしかない。
確かに切れている。
そんな現実が私に突き刺さり、また茫然とした。
「今日はこれで勘弁してあげるわ。
じゃ、また今度。」
カイトとメイは私を縛っていた縄を解き、どこかへ行ってしまった。
「…………」
私は力なく崩れ落ち、岩の突起にひっかかって止まっていた。
どうして……。
なんで……。
どうして虐められるの!?
私何も悪いことしてないじゃない!
いくら叫ぼうとしても声は出なかった。
涙も、出なかった。
「…………!」
叫びたいのに、思いっきり泣きたいのに。
こんな事なら魚に生まれたかった。
魚なら声が出なくたっていい!
どうして……、
「…………!」
私は魚じゃないの!?