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Re: —歌えない人魚姫—【イラスト募集です】 ( No.89 )
日時: 2012/08/27 01:53
名前: マリン ◆eVFVquZhMQ (ID: RHpGihsX)
参照: 睡眠を邪魔されたマリンは衰退しました。

第十一話          悪魔の襲来(訳:営業開始)


とりあえず営業手伝わなくていいという碧斗に付きまとい、結局折れた碧斗に手伝わせてもらうことになった。

「んじゃまあ……料理運んでくれる、か?
 本当は小さい奴にはやらせたくないんだがな。」

小さくないし! 14だし!
繰り返すようだが14だし!

というか……さっきから扉がダンダン叩かれてないか?
壁ドンもあるェ……。

「今開けるって……煩い奴等だな」

そう言って私に笑いかける碧斗。
やっぱ優しいなあ……。

「じゃ、ななはここで待機しとけよ。
 俺が言うまで動くなよ? 危ないからな?」

私が頷くと碧斗は行ってしまった。
暫くするとすごい金きり声が聞こえてくる。

それと同時に、また恐怖という感情が芽生えたのが分かった。
忘れていた。

人間が怖い、そういう感情を忘れていた。
碧斗が怖くなかったから……。

私は台所に座り込み、蹲った。
まだ聞こえる声が恐怖を倍増させる。

駄目、立たなきゃ。
手伝わなきゃ、頑張らなきゃ。

人間の世界に住むんだから。

必死に自分を奮い立たせ、立ち上がった。

そうこうしている間に声は止んでいた。
それとほぼ同時に碧斗が台所に来る。

「もう大丈夫だぞ。
 って……なんで震えてるんだ?」

フルフルと頭を横に振る。

碧斗の頭上には?マークが浮かび上がっていた。

「……まあ、いいか。
 それじゃあまず水持ってってくれ。

 全部の席にな。」

コクコクと頷き、コップに水を入れた。
お盆に5つコップを乗せると、水が揺れている。

自分が震えているから揺れてるんだろう。

それでも、それでも私は台所から出てテーブルの所まで行った。
チラッと覗くと女の子の大群。

な、何人いるんだろう……?
10人、20人、30人……いや、もっと沢山かもしれない。

深呼吸して部屋に入った。
一瞬にして私に注がれる視線に逃げ出しそうになったが、そんなことできないという思いでテーブルにコップを置いた。

「……アナタがななちゃんかしら?」

ふいに横から声が聞こえた。
隣を見ると、つやつや光るオレンジ色の髪の人がした。

「あたしは花田 蜜柑よ。」

黄緑の目でもあり蜜柑を連想したが、その連想はあながち間違ってもいなかったようである。

「よろしくね」

手を差し出された。
私は怖いのを我慢して手を握った。

蜜柑さんは握り返してくれて、その手は温かかった。


あっ……。
その時蜜柑の匂いがして、まるで蜜柑畑にいるような気分になったのである。

手を離した時、少し名残惜しかった。

「アナタのことは碧斗君から聞いたわ。
 一緒に暮らすんですって?」

正直に話したのか……。

「碧斗君の妹ってことになるのかしら?
 ふふっ、碧斗君の妹なら私の妹だもの。

 ……碧斗君……ふふっ、ふふふふふ」

蜜柑さんが妄想に浸りだしたので黙って台所に戻ってきた。


そして、そこには何かを見入っている碧斗がいた。