コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君に伝えたいこと ( No.8 )
- 日時: 2012/06/09 09:32
- 名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: u5JYbeHw)
*♪* 二話 *♪*
「ここが……?」
「うん、そう! 楽しそうなところでしょ?」
僕が連れられてきたのは、『夢の国』というボロっちい看板が置かれた門の前。門と言っても、兵士なんかいないし、普通の鉄でできた柵?みたいなやつ。まあ、僕の背丈の五倍はあるから一応門と言っておきましょう。
だけど、楽しそうなところって言ったら、どう、かな……? 夢の国って、某テーマパークのパクリみたいだし。
「ま、楽しそうなところじゃなくても、暇つぶしになればオッケー! さ、入ろ!」
女の子に腕を引っ張られて、門のすぐそばまで言った。僕、あんまり帰りが遅くなったら怒られるんだよ……。まあ、今は関係ないか。
女の子は重そうな門を方手で軽そうに開けて、中に入る。
『おーい、そこは駄目だ! 雛乃っ!』
「…………?」
今、小さくお兄ちゃんの声がしたような……。
僕が茫然としていると、いきなり腕を掴まれた。
「何してるの? 先に行っちゃうよ!」
「うわぁ……!」
中には、僕が千人いてもてっぺんに届かないような大きな観覧車、メルヘンの国にありそうな馬のメリーゴーランド、必ず十回に一回は事故が起きそうな、ジェットコースターとかがあった。
「ねー、凄いでしょう? 何から乗る?」
「え、いまから……乗るの?」
「だってぇ、貴方も家に帰りたくないんでしょ?」
女の子の鋭い言葉に、僕はぐっと口を閉じた。確かに、その通り。どうせ怒られるのなら、遊んで言った方が得かもしれないし。
僕は、コクンと首を縦に振った。
「そういえば、貴方の名前はなーに? 私は、柊 由紀って言うの!」
「ゆ、由紀ちゃん……よろしく。僕の名前は、柚崎 雛乃」
「あー、楽しかったぁ!」
かなり遊んで行って、楽しかったけれど、僕はそろそろ帰りたかった。やっぱり、家族やお兄ちゃん達がいないと……。
「次は、何乗る??」
「え、まだ乗る……の?」
「当たり前じゃない!」
あ、当たり前って……。いい加減帰らないと。だけど、なぜかカラスの声は聞こえない。ここら辺は、カラスがたくさんいて、昼でも夜でも関係なしにカーカーという声が聞こえるのに。
ふと空を見上げると、僕は凍りついた。
「な、何……? この空」
紫色の空の色に、どすぐろい黒の雲。こんな空、異常じゃないの。
やだ、一刻も早く……! 帰りたい-------。
「ねぇ、もっと遊んで行きましょう?」
「っや……や!」
僕は由紀ちゃんの手を振りほどいて、門の前へ戻った。どう戻ったのかは、知らない。
「開いた……!」
てっきり門は開かないものかと思っていたら、案外簡単にあいた。良かった……。僕は目をつぶって、家まで猛ダッシュした。
もうすぐ、家に着くはず……!
「お兄ちゃん……!」
家に入り込むと、お兄ちゃんはいなかった。僕を探しに、外へ出て行ったのだろうか。
その瞬間、ピンポーンと、聞きなれた家のチャイムの音がした。すぐそばにあった受話器を手に取る。
「もしもし?」
「由紀でーす。どうして先に帰っちゃったの??」
「あ……」
僕は、出ることが出来なかった。由紀ちゃんは、僕の予想ではこの世界の人じゃない……と、思う。
ピンポーン……ピンポーン……ピンポンピンポンピンポン……
「……っ!」
僕は思い切って、ドアを開けた。目の前には、ウサギのように目を真っ赤にして泣き腫らしている由紀ちゃんがいた。
「由紀ちゃん……?」