コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君に伝えたいこと ( No.9 )
- 日時: 2012/06/11 21:21
- 名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: u5JYbeHw)
*♪* 三話 *♪*
「うわ〜ん! 雛乃ちゃん、途中で帰っちゃうなんて、ひどいよぉ!」
「だ、だって……」
怖かったから、と口に出す前に、急に由紀ちゃんが、僕の体に飛びついてきた。ちょっと……。
間もなく、由紀ちゃんは僕の体から離れた。さっきまでリンゴのように赤かった由紀ちゃんの瞳は、元通りの水色の瞳に戻っている。
「……ねぇ、雛乃ちゃん」
「何?」
由紀ちゃんは、さっきまでの子供っぽい表情とは裏腹に、今は、妙に改まった-------真剣なまなざしと顔をしている。
「あの、さ……」
由紀ちゃんの白いブラウスの袖の中で、雪のように白い指がプルプルと震えている。あれ? なんか、凄く怖いよ、由紀ちゃん……。
その時、少し向こうにある塀の角から、聞き覚えのある男の子の声が聞こえてきた。
「雛乃っ! いないなら、返事してくれ〜!」
由紀ちゃんは、お兄ちゃんの方に行こうとした僕の腕をガシッとつかんで、何も言わずにどこかに向かって走っていた。急の出来事に驚いたように、由紀ちゃんの足がもつれている。
少し走って、すっかりお兄ちゃんの声が聞こえなくなったとき、由紀ちゃんは急に立ち止まって僕の方を向いた。
「私のことは、誰にも言っちゃダメだよ!」
「そ、そんなことよりも、僕、お兄ちゃんの方に……」
「うるさいっ!」
……へ? 由紀ちゃん……。何だか、さっきから怖い。それに、やろうとしていることが良く分からない。
「あのね、えっと……!」
「何、由紀ちゃん」
『うるさい』といきなり怖いことを言われたので、僕はあまり由紀ちゃんに優しくするつもりはなかった。こんなの、自分でも情けないって分かっているけれども。
「う〜んと……、私、ひ、雛乃ちゃん、と友達になりたいのっ!」
「…………へ?」
「あのね、私、雛乃ちゃんが来るまでずっと一人ぼっちだったの。だから、雛乃ちゃんと会えて、すっごく嬉しくて……!」
なんなんだろう、いきなり。
だけど、友達になれって言われても。それに、僕と由紀ちゃんは、すでに友達じゃないの?
……ま、いいか。
「いいよ」
「本当? ずっと、私と一緒にいてくれるの?」
「うん。出来る限りは、ね」
由紀ちゃんのかしこまった顔が、いきなりパッとほころんだ。明るい水色の瞳が、さらにキラキラと光っている。
「じゃ、じゃあ……。私と雛乃ちゃんは、ずっとずーっと一緒だよ!」