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【誰も居ない図書館の一角で】 ( No.31 )
日時: 2012/06/16 17:06
名前: 狼鳶 ◆InzVIXj7Ds (ID: pVoFPF2t)

【誰も居ない図書館の一角で】



「裕樹(ユウキ)、重い」
「あぁ〜? 良いじゃねぇかよ」


周りに誰も居ない図書館の一角で一人で本を読んでいると、急に背中が重くなった。
振り返ると、そこには裕樹が後ろから抱き着いていた。


「良くないよっ。第一ここ図書館だよ? 皆に見られるって……」
「そんなもん 見せつけてやれば良いんだよ」


裕樹は耳元で囁き、その低い掠れ気味の声が全身に響き渡る。
私は裕樹の声に弱い。それを知っているのか、わざと耳元で囁いたのだろう。
そして離れるどころか強く抱き締めた。


「ゆ、裕樹っ!」
「しっ、大声出したら皆にバレるだろ」
「だって……って、さっき見せつけてやれば良いって言ってたじゃん、あっ……」


うっかり口を滑らしてしまったその言葉を、裕樹が聞き逃すこともなく。
裕樹は意地悪そうな笑みを浮かべた。


「ふーん、じゃあ見せつけても良いって事だな?」
「そっそんな訳ないじゃん!」
「まぁ良いけどよ。……なんて言うとでも思ったか」
「わっ!」


解放してくれると思ったその時、裕樹は器用に私を自分の腕の中に閉じ込めた。
私は裕樹の胸をトントンと叩く。


「ゆっ、裕樹っちょっと!」
「うるせぇよ。マジで皆にバレるぞ」


離す気配もなく、裕樹はさらに強く抱き締める。
私は諦めて抵抗することを止めた。裕樹は無言になり、私を暫く抱き締めていた。


—— ってか、今日はやけにくっ付いてくるよね。どうしたんだろう?


「どうしたの」と訊こうとした時、裕樹が口を開いた。


「……お前さぁ、本ばっか読んでんじゃねえよ」
「へ?」


突然そんな事を言ったので、私は間抜けな声を出してしまった。


—— 本? そういえば、今日は課題を終わらせる為にずっと図書館に籠りっぱなしだったなぁ。……あっ。


「裕樹もしかして、私が本ばかり読んでいたから今日一日寂しかった……とか?」
「なっ! ち、違ぇよ!」


否定する裕樹。けれど顔が真っ赤で、説得力が微塵も無い。


「図星でしょー。顔真っ赤ですよ? 裕樹君」


もしかして形勢逆転? と思っていたのも束の間。真っ赤になった顔が
さっきの顔よりももっと意地悪な笑みになった。


「お前、自分の立場解ってんだろな? 今ここは俺達しか居ねえって事をよぉ」
「えっ ど、どういう意味……わあっ!?」
「これはお仕置きが必要だな……」




お仕置きと言う名の、甘い甘いひと時を過ごしましたとさ。






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【後書き】

何この終わり方、昔話!?
危ない、危ない。あと少しで裏に入りそうでしたよ(笑)
この図書館はメッチャ大きいです。その一角が舞台です。
……実は版権の小説を創作に書き変えたブツです……はい。
いやっ、あのっサボった訳じゃないですよっ!?←

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