コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

〜 Short story1 〜 ( No.47 )
日時: 2012/06/17 15:39
名前: まめ太 ◆InzVIXj7Ds (ID: pVoFPF2t)

〜 Short story1 〜



目の前にいる男は酷く無愛想だった。

何を言っても一言二言で済ますため、会話が思うように続かない。

そういう私も、特に話しかけるわけではなく、
ただひたすら俯いているだけだった。

なぜならこの男とは、ほんの数時間前に会ったばかりだからだ。






仕事帰り、細い路地裏を歩いていると、ふと後ろに感じた気配。
始めは気のせいだと思っていたが、歩いても歩いても
背後のひやりとした感覚は消えない。

そういえば、痴漢注意とかいう看板があったな……

ここで一般的な女性なら、恐怖に怯えて走り出すだろう。
しかし私は、その一般的というカテゴリーとは少しずれた
分類にある。

ああ……ほんとうに面倒臭い

私は立ち止まると、後ろへ振り返り、
持っていたバックを思いっきり振りかざした。
ごんっ、と鈍い音が路地裏に響き渡り、背後にいた男が
地面にしりもちをつく。

ふふん、ざまあみろ。
私に目をつけたのが運の尽きよ。
ちょっとした優越感に浸っていると、男が殴られた頭を抑えつつ、
こう言った。

「あの……これ落としましたよ」











話を聞くと、電車に乗っていた際に私が落とした手帳を
届けに来てくれたらしい。
ずっと声を掛けていたのだが、なかなか振り向いてくれず、
やっと振り返ったと思ったら、このザマだという。
あー……そういえば音楽聴いてたわ。

とりあえず、此処で話すのもあれなので、近くのカフェへ
入ったのまではいいのだが……。

「……。」

『……。』

な、何を話せばいいのだろうか。
重々しい沈黙が2人を包み込む。

『あの……本当にすいませんでした』

もう数十回は言っているであろう言葉を口にする。
その度に「いえ……」と言われ、会話終了。
重々しい空気が苦手な私にとって、この沈黙はなんとも耐え難い。
うう……一体どうすればいいのだろう。
柄にもなく涙が出そうになり、ぎゅっと唇をかみ締めた。








「……そんな悲しい顔をしないで下さい」

ふいに、凛とした声が耳に響き渡った。
それが目の前の人物から発せられたと理解するまで、数十秒。

下げていた顔を慌ててあげれば、さきほどまでの無愛想とは
打って変わって、驚くほど柔らかい表情で微笑んでいた。

ああ……この人もこんな表情かおをするんだ……

心臓の脈打つ鼓動がどんどん早くなるのが自分でも分かる。
それが何なのか、理解できないほど私も馬鹿ではない。
26にもなって……まさかこんな少女漫画のような
事が起こるとはね。

だから、その感情の名前を尋ねる必要はない。
だって……




答えは聞かなくても分かるもの




                         END




○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


〜あとがき〜

初めまして、まめ太と申します。
今回は狼鳶に誘われ、ドキドキしながら載せてみました。

いかがでしたでしょうか……?
大分前に書いたもので、いま読み返してみるとなかなか理解不明な箇所が所々ありますが、
そこはまあ、目を瞑っていただいて←

これを機に、ちょくちょく出現するかもしれませんが、
その際は温かい目で宜しくお願い致します。

ではでは

○● まめ太 ●○