コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

(2)第一話 〜久しぶりの登校〜 其の二 ( No.6 )
日時: 2012/06/12 22:14
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0274ba/4/

 しばらく廊下を歩いていると、とある重大な問題に直面した。

 生徒会室って……どこだ?
 高等部校舎内にあるのか?
 それとも部室棟にあるのか?

 ふむ、どこにあるのか分からん……。
 とりあえず、中庭にある学校案内の地図を見ればどこにあるか分かる、か……。
 俺はまず、高等部校舎を出て。
 初等部、中等部、高等部の校舎に囲まれて設計された中庭に向かうと、そこで俺が求めていた学校案内の地図を早くも発見する。

 俺のように時々迷う輩がいるために造られた地図のようだが……。
 無駄に広すぎるのがいけないんじゃないのか?
 まぁ〜愚痴を言っていても仕方ない、か。

 ——それにしてもここの中庭は豪勢だよなぁ〜。

 学校案内の地図を見つつ、少し辺りを見渡した。
 ここの学園の中庭は全校生徒の憩いの場になっており。
 中庭の中央には噴水。

 後は綺麗に整えられた芝生や花々が咲き誇る花壇などがあり。
 庭園のようになっている。
 その近くには学食兼カフェがあったりする。

 昼のポカポカ陽気の時には昼食を食べ終わった生徒たちが芝生の上で昼寝をしたり、談笑したりと、人で賑わいをみせている。

 かくいう俺も昼食後にはここへ赴き、噴水前にあるベンチでお世話になる事がある。
 良く眠れるせいか、たまに夕刻時まで眠っていた事がある。
 あの時はさすがにビビって少しの間、ここに来るのを自粛していた時期があった。

 ——ふむ、今となっては良い思い出である。

 俺は学校案内の地図で生徒会室の位置を確認する。
 生徒会室は時計塔にあるらしく俺は時計塔を目指す事にした。
 しかし、よりにもよって時計塔か……。

 ——初等部生の頃。

 初等部校舎から見えた、少し古ぼけた大きな建物に興味本位で近寄り。
 しばらくそれに見惚れていると、

 【ゴーン! ゴーン!】

 と、地響きのような大きな鐘の音が、突然鳴ったものだから驚いてしまい。
 その際、足がすくんでしまって。
 しばらくその場から動けなくなったのを今もなお鮮明に覚えている。
 間近であの鐘の音を……。

 ——それも初等部生の頃に聞けば、誰だって獰猛な化け物が吠えたのだと勘違いしてしまうだろ。

 ……はぁ〜。

 今となってはこれも良い思い出……なのか?


 ——ああ、もう!

 俺は恥ずかしい思い出をさっさとかき消す為に頭を掻いた。
 だけど、消そうとする度に鮮明にその恥ずかしい記憶がよみがえってくる。
 そして、俺が消そうと必死になるにつれて、周りで談笑していた生徒たちが徐々にではあったが遠退いて行った……。

 ——これは、アレだよな……。
 色々と勘違いされてそうだ……。

 一人だけマスクをして目立つ中、さらに必死の形相で頭を掻くなんて動作は誰がどう見ても奇行にしか見えん。
 今日は厄日、なのか……?

 「がっくし」と、肩を落とした俺は「とぼとぼ」と歩きながら時計塔に向かっていると前方の道端に黒い物体が落ちていた。

 ——いや、倒れていた……?

 中世的な黒いドレスに身を包む金髪の等身大の人形(?)がうつ伏せで倒れており。
 周りを歩く生徒たちには見えていないのか、全員スルーだった。
 ふむ、やはり人形なのだろうか。
 しかし、誰がこんな物を——。

 【ゴロゴロゴロ〜!】

 ん?
 何だ、今の地響きは……。

 ——雷の音か?

 俺は徐に空を見上げ、見渡した。
 けれど、雲一つないピーカン照りだった。

 あれ?
 聞き間違いか……。

 まぁ〜いいや、どうせこれから生徒会室に行くんだから人形が中庭に不法投棄されている事を報告すれば済む事だろう。
 予定通り俺は時計塔にある生徒会室に向かって足を進める事にした。
 人形を踏まないように気を付けながら歩いて……。

 【バタン!】

 突然、目の前が真っ暗になりどうしてか鼻がもの凄く痛かった……。
 状況を把握するべく辺りを見渡すと……。

 ——俺はどうやら受け身も取らず、地面にダイレクトで顔から倒れてしまったようだ。

 気を付けて歩いていたのに、ダサいなぁ〜。

 その際、辺りに撒き散らしたプリントを回収し、立ち上がろうと試みたが……。
 どうしてか、足に力が入らなかった。
 それどころか、自分の足じゃないように重かった。

 変に足を挫いてしまったのだろうか?

 そう思いながら自分の足に視線を向ける。
 と、俺の両足に先ほどの人形がしがみついたまま、うつ伏せになって倒れていた。

 ——何、この状況……。

 もしかして、これは呪いの人形なのか?
 俺を地獄に引きずり下ろすために目の前に現れたの、か?

 ……それなら合点がいく。

 どうして周りの生徒たちがスルーしていたのか。
 それは俺にしか見えない死の代弁者たる死神だからだろう。

 何だそうか。
 俺、今日死ぬのか……。
 結構、お早いお迎いだなぁ……。

 開き直るように俺は天を仰ぎ見た。
 今まであった様々な映像が頭の中に流れ、これが「フラッシュバック」なるモノなのだと理解した。
 すると、

 【ゴロゴロゴロ〜!】

 と、先ほどの地響きが再び鳴り響いた。

 また、か……。

 しかし、何の音だろうか?
 辺りを見渡しても地響きが鳴るような物は置いてないし。
 鐘が鳴る時間でもない……。

 ——そこでふと、俺は人形に視線を向けていた。

 まさか、な……。
 だけど、この人形にしがみつかれている部分が……両足が妙に生温かい。

 ……人形じゃないのか?

 俺は確認するべく、辺りを少し見渡してからある物を発見する。
 そのある物とは、この状況におあつらえ向きの小枝で。
 それを掴み取って、人形(?)の頭を突いてみた。
 突く際、鼻を摘む事を忘れずに……。

 すると、

 「……痛いわ、阿呆……」

 うつ伏せのまま覇気のない声が人形から……。

 ——いや、少女から発せられた……。

 聞き間違いじゃない事を確認するべく。
 もう一度、俺は小枝で少女の頭を突いてみた。
 今度は少し強めに……。

 「痛いと言うとろうがぁ!」

 怒号を上げながら顔だけ起こした少女。
 その顔立ちは、そのまま宝石に出来そうなほどに澄んだ色を擁するエメラルドグリーンの右目に左目は眼帯で隠し。
 肌も透き通るように白くて、第一印象通り。

 ——本当に人形のような風貌だった……。