コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

(1)第一話 〜久しぶりの登校〜 其の四 ( No.11 )
日時: 2012/06/14 23:23
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0274ba/6/

 ——時計塔内部。
 初めて時計塔に足を踏み入れた。
 石造りの壁伝いに古めかしい木製の階段が上層部へと続く、吹き抜けの空間。
 大きな振り子が左右に「ゆらゆら」と動きながら時を刻んでいた。
 俺は天を仰ぎながら、

 「遠いなぁ〜」

 と、弱音を吐きつつ階段を上り始めた。
 一段、一段。
 足を踏み込む度にギシギシとしなり、自ずと足場を確かめるようになる。

 ——これ、ホント大丈夫だよな……。

 恐怖心を抱きながら一歩一歩、出来るだけ体重を掛けないよう上る事。

 ——数十分あまりが経過した頃。

 ようやく最後の踊り場が見えてホッとする。
 そして、赤いじゅうたんが敷かれた道を道なりに進むと前方に見えて来た、焦げ茶色の大きな両開き式の扉。
 その上に「生徒会室」と木彫りされた物が飾っており。
 扉の取っ手の部分が黄金に輝き、くすむ事無く、十二分に磨かれていた。
 扉の前に立った俺は息を整えて、扉をノックしようとしたら中から、

 「——なぁ〜いいだろ?」
 「だ、ダメだって……」
 「そう言いながら、お前——」
 「ち、違うんだ。これは……」
 「何が違うってんだ? ……ほら」
 「——はぅ……。やめっ!」
 「やめない。だって、こんなにも喜んでいるじゃないか」
 「やめっ……。ホント、ダメだって……」
 「ふ、息が荒いぞ?」
 「そ、んな——事、ない」
 「フフフ、正直な奴め……」

 と、中から甘美な男たちの声が聞こえた。

 えっと……。
 うん、そういう世界もある、よな……。

 俺は胸に手を置き、ゆっくり目を閉じて感慨深く頷いた。
 その最中も中からは甘美な男たちの声が艶めかしく聞こえている……。

 さて、どうしたものか……。
 お邪魔するのもなんだし、ここは一度教室に戻るってのもありだな。

 ——うん、そうしよう。

 気配を消し、気付かれないよう抜き足差し足忍び足で引き返していると、

 「っ——はぁ〜、いい! そこぉ、いいっ!」

 と、盛り上がっているのか中から大声で甘美な男のこ……。

 ——いや、息遣いの荒い艶めかしい女性の声が聞こえて来て。

 俺は思わず足が止まってしまった。

 ……中では一体、どんなプレイが繰り広げられているんだ?

 気になった俺は扉の傍まで戻り、状況を考察してみた。

 ——キャストは男二名、女一名の計三名。
 そして、何らかの熱い宴が生徒会室の中で繰り広げられているって、所か……。

 ふむ、ちょっとだけならいいよな?
 うん、そうだ。これはいわゆる保健体育の……。

 ——そう、社会見学のようなものだ。
 大切だよなぁ〜、社会見学は……。

 学習のため、俺は音を立てないよう扉をゆっくり開け、その隙間から中を覗いてみた。

 ——決して下心で覗いている訳ではない事をここに誓おうと思う。

 隙間からはソファーに腰掛ける、衣服が乱れ綺麗な淡茶色の長髪美人系女子生徒が見えた。
 その女子生徒のたわわに実った果実を優しく包み込む、艶やかな包装が少し外れかかっており。
 その水滴したたる瑞々しい果実がこぼれ落ちようとしていた……。

 女子生徒はそんな事をお構いなしに荒々しい息遣いでブラウスの襟をくわえながら、舐め回すように下方に伸ばしている腕を艶美に動かす。
 腕を動かす度に漏れる女子生徒の吐息がほとばしる中。
 男たちのボルテージが上がった甘美な声が生徒会室に響き渡る……。
 俺はその光景に瞬きをする事を忘れ、溢れ出て来る生唾を飲み込む事で精一杯だった。

 ——何て言うか、パッションの一言に尽きるな……。

 しかし、女子生徒の姿は確認出来たが……声だけで男たちの姿が見えなかった。
 なら、もう少しだけ、もう少しだけ扉を開け……。

 ——あっ。

 欲張り過ぎたせいか、思いのほか力が入ってしまい扉がほぼ全開状態になった。
 先方は夢中になり過ぎていて、まだこちらにお気付きになっていなかったが、俺はもう隠れミノが無くなった状態でさらされてしまっている。

 やべ、早く隠れないと……。

 ——あれ?

 俺はある違和感に気付いてしまった。
 いや、気付かざるを得なかった……。

 生徒会室にはソファーに腰掛ける、衣服が乱れ、たわわに実った果実がご自慢のワガママボディーの美人系茶髪女子しかおらず。
 その少女は収納式の巨大モニターをとろける様な眼差しで見つめていた。

 ああ、そういう事ね……。

 カラクリが分かり俺は思わず、腕を組んで頷いてしまった。
 その行動が油断大敵であった事は間違いなかった。
 頷き終わった俺が前方に視線を戻したその時。

 モニターの映像を恍惚な眼差しで見つめていた少女が感極まったあまり、艶やかな流し目を決め込み、その流れで俺と目が合ってしまった。
 さすがの少女も俺の存在に気付いたのか、目を見開きながらこちらを二度見し、お互いフリーズしてしまう。

 フリーズをしている最中もモニターの中で繰り広げられている男たちの熱い宴による甘美な声が生徒会室に木霊する……。

 『……』

 『……』


 「……っん、はぁ〜。い——」
 「続けるな、続けるな」

 何事もなかったように……。

 ——いや、現実逃避のように己の欲に走った少女の事を俺は全力で制止にかかる。

 その際、もつれてしまい。
 俺がソファーの上に少女を押し倒したような構図が出来上がってしまった。

 彼女の乱れた衣服から見え隠れする少し汗ばんだ柔肌。
 そして、たわわに実った果実を少女が恥じらいながら両腕を駆使して隠そうとはしているが、逆にそれがアダとなり、果実が自己主張している。
 鼓動を乱しているのか、彼女の吐息がほんのり朱に染まった艶やかな口唇から漏れる。
 それを間近で、ほんの数センチの所……。

 ——真上から見下ろしている俺は彼女と目が合ったまま、お互いに何も語る事無く。

 しばしの沈黙が続いていた。
 すると、何を思ってか少女が果実を隠していた右腕を離し。
 その人差し指で自分の唇に付けると、そのまま俺の唇にマスク越しからなぞる様に擦りつけて来た。

 「——優しくしてね」

 ウインクをしながら色っぽく発せられた言葉に俺は……。

 ——俺はっ!