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(2)第二話 〜阿鼻叫喚の宴〜 其の一 ( No.16 )
日時: 2012/06/16 22:03
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0274ba/8/

 ——数十分後。

 「美嘉ちゃ〜ん。美嘉ちゃんの愛情たっぷりのドリンク一つよろしく〜」
 「はいはい」

 元気を取り戻した涼は桜乃にドリンクを注文し、徐に携帯を取り出してイジり始めた。

 俺が涼の事を元気づけている間に気絶していた客人たちが目を覚まし、マスターに酷い仕打ちを受けた彼らはビタ一文も払わずに出て行くのかなと思われた。
 しかし、美嘉にゃんメイドを見た瞬間に彼らは表情を緩ませて丁寧に手渡しでお金を支払って出て行ってしまわれたのだ……。

 桜乃は握らされたお札を見て客人たちを追ったが、もうどこにも彼らの姿はなく。
 心苦しみながらも受け取ったお札を収益の足しにしたのだった……。

 「ところで、少年。いつになったら飲み会をセッティングしてくれるんだ? こちらは準備万端だぞ」

 煙草を吸いながらマスターは密やかに涼と約束していた飲み会こと合コンの段取りについて尋ねる。

 「お前ら、またそんな事を画策していたのか」
 「そんな事とは何だ! 我らは純粋に女性とお近づきになりたいだけだ!」
 「そうだ! そうだ! マスターの言う通りだ! 僕たちはただただ可愛いおんにゃにょ子たちと談笑したいだけ!」
 「だったら、何でそんなに必死になる?」

 俺の言及に馬鹿共はこぞって表情を強張らせる。
 どうやら図星のようだ。下心だけが先行し、気持ちの高ぶりを抑えられずボロを出すとは絵に描いたような失敗例だな。

 「アレだよ。アレ……ねっ? マスター」
 「おう。アレだよ。——美嘉の新しい母親をだな……」

 「私のお母さんは一人で十分だよ〜」

 いつもの事で慣れた様子で淡々とした対応を見せた桜乃は注文されたドリンクを涼の前にそっと置く。

 「……全く、二人して好きだよね〜。そう言う事」

 俺の隣の席に座った桜乃は頬杖を付きながら、少し呆れた様子で口走った。

 「女の美嘉には分からんさ。大人の男の遊びと言うモノを……」
 「そうですとも。マスターの言う通り。美嘉ちゃんにはまだ早いお遊びだから理解に苦しむんでしょうよ」
 「……何だか、馬鹿にされている気がするわ」
 「桜乃、そんな馬鹿共の言う事をまともに聞くもんじゃないぞ〜」
 「そこの無愛想少年、だまらっしゃい!」

 ノリとは言え、涼(バカ)に軽く頭を叩かれて少し大人げなく俺は憤りを感じてしまう。

 「まぁまぁ、菅谷氏。一旦落ち着きたまえ……」
 「了解しやした、桜乃パパ」

 敬礼をしながらその旨を伝えた涼は再び携帯をイジり始める。
 どうせ、どこぞの女に定期連絡でもしているのだろう……。

 「ねぇ〜。マスター、今日は大丈夫?」

 涼は携帯をイジりながらマスターの事を見向きもしないで徐に呟く。

 「む? もしや……」
 「そう、ちょうどおんにゃにょ子たちの手配が出来そうだよ〜」
 「ふむ、今宵は……」
 「決戦だぬ……」

 唐突に合コンの段取りが決まり、気合が入る二人を余所に俺と桜乃は深い嘆息を吐いて冷やかな態度を取る。

 「さて、そろそろ俺はお暇しようかな」
 「え〜、慎くん帰っちゃうの?」
 「いや、マスターと涼はこれから合コンだろ? だから、邪魔者はさっさと退散せんとさ」
 「残される私の気持ちを考えてよ〜」

 「そこのお二人さん。そう悲観せずに聞いてちょうだいよ」

 邪魔者たる俺たちの会話に割って入って来た涼は人の気も知らずに「ニヤニヤ」と気色の悪い笑みを浮かべながら自分の話を聞くように促して来る。
 あまり芳しくない話だろうと思いながらも俺たちは涼の話に耳を貸す事にした。

 「お二人さんも合コンに参加しないかい?」

 『……は?』

 俺たちの不安が的中したようだ。
 涼が発した言葉に俺たちは思わず絶句してしまう。
 合コンに参加してみろだと……?

 「ほら、お二人さんは合コンのゴの字も分からんひよっ子ちゃんたちでしょ? だからこれを機会に一度経験してみたら? それに二対二の合コンじゃ〜盛り上がりに欠けるからさ。人数合わせと思って……」
 「つまり、何か……俺たちはお前らのバーター要員と言う事か?」
 「まぁ〜そういう事」

 回りくどい事を言わずストレートに返答された言葉に少し引っ掛かる物があったが、友人の誘いをムゲに出来ず、合コンとやらを経験してみる事にした。
 もちろん、不埒な飲み会にならないよう俺と桜乃は目を光らせるがな。

 「ところで、少年。先方の情報とかはないのかね」
 「もち、お嬢さん方は現役の女子——高生っ! 拍手!」

 馬鹿共は盛大な拍手をして盛り上がっているが、正直不安で胸が一杯だった。
 一体、どんな方々がやって来るのだろうか……。

 ——って、ちょっと待て。現役の女子高生だと?

 それって、犯罪じゃないのか?

 「ねぇ〜。盛り上がっている所、水を差すようだけど……本当に健全な飲み会なの?」
 「もちろんだとも。テイクアウトなんて展開はナッシング〜」
 「ていくあうと……?」
 「馬鹿者! 少年、少し自重しろ!」

 テンションが上がり過ぎて口が滑った涼に頭を冷やす意を込めてマスターが氷を投げて見事、彼の額にクリーンヒットする。
 必死過ぎる二人の態度を見ていると健全な飲み会にする気はなさそうだ……。

 ——はぁ〜、先が思いやられる……。

 すると、涼が手配した女性陣が到着したのか、入り口の方からかすかに声が聞こえて来た。

 「来たみたいだね〜」
 「そのようだな」

 先ほどまでテンションが高かった涼とマスターは女性陣が来たと知った途端に顔色を変えて緊張の面持ちで入り口の方に視線を向けると、

 「ここみたいだよ、光ちゃん」
 「は、離せと申しておる!」

 聞き覚えのある声と共に店内に入って来たのは——ボサ髪童顔のセーラー服少女と金髪眼帯の黒ドレス少女のちびっ子コンビだった……。