コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

(1)第二話 〜阿鼻叫喚の宴〜 其の二 ( No.17 )
日時: 2012/06/22 21:43
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0274ba/9/

 テーブル席を囲っての三対三の対面式合コンが始まってしまった……。

 「じゃ〜最初に自己紹介から行こうか!」

 ——何でこうなった?

 「僕の名前は菅谷涼。職業——愛の伝道師(ラブマスター)で〜す!」

 ——どうしてこうなった?

 「おいおい、それ職業じゃないだろ! ——って、自己紹介がまだだったか……。私はこの店を仕切らせてもらっている、桜乃だ。気軽に桜乃パパと呼んでくれ」
 「それ、違うパパになっちゃうでしょ!」

 合コンの鉄板ネタなのか知らんが、一通り終えて手応えがあったらしく馬鹿二人は後ろ手に拳を握る。

 ——はぁ〜、憂鬱だ……。

 ちびっ子コンビこと新堂杏とイリヤ・シュガーライトが入店し、俺は逃げ出したくなった。しかし、知人がここに来たからには馬鹿共の毒牙から守らなければ、と言う想い一心でどうにか踏み止まる。

 けれど、どうしてここにやって来たかと二人に問うと、杏は可愛い妹をほったらかして俺(あに)がどこへ行ったのかを突き止めるべく、手当たり次第に連絡を取っていたらしく。最後の砦である涼に聞いた所、この店にいる事を知って来たようだ。

 そして、もう一人のちびっ子——イリヤはただただ杏に無理やり連れて来られたみたいで、ある意味被害者だった。

 しかし、日本文化に興味があるようで「ジャパニーズ合コン」と言う物を一度は経験してみたいと思っていたらしく。当初は杏に無理やり連れて来られて不機嫌だったが、今ではすっかり機嫌を取り直して妙にやる気を見せている次第である。

 「——ふむ、まず互いに小手調べと言った所か……」

 感慨深く頷きながらイリヤが真剣な面持ちでそう呟く。
 合コンを血生臭い戦闘と勘違いしていないか?
 まぁ〜ある意味、心理戦だとは思うけれど……。

 「ほらほら、そこの無愛想少年。自己紹介」

 ボーっと戦況を見届けていたら涼に指摘された俺は渋々ながら自己紹介する事にした。

 「えっと、俺の名前は——」

 「さぁ〜、続いてはお嬢さん方。自己紹介の方をよろぴこ!」

 俺が自己紹介している途中で先に進められてしまい、堪らず俺は涼の足を踏んづけてやった。が、涼は苦痛の表情を浮かべる事無く、笑顔を絶やさずにいる。

 「えっと、私は桜乃美嘉です。よろしくお願いします」

 「くぅ〜! 真面目っ子可愛いね〜!」
 「ふむ、さぞかし両親が美男美女なのだろう」
 「いや、感慨深そうに頷いているがアンタの娘だろ……」
 「そこの生臭坊主、だまらっしゃい!」

 「……はぁ〜」

 「ふむ、次は我じゃな。我が名はイリヤ・シュガーライト。今宵はビターな一時を楽しもうぞ」

 「くぅ〜! クールっ子カッケー!」
 「なるほど、大人の一時が御所望とな」
 「それ、セクハラ」
 「黙れ、小僧!」

 「……はぁ〜」

 「次は私だね。私の名前は新堂杏。杏ちゃんって呼んでね、お兄ちゃん♡ パパ♡」

 「くぅ〜! ロリっ子サイコー!」
 「杏ちゃん、後でおこづかいあげようね〜」
 「捕まるぞ、エロオヤジ」
 「これは未来への投資だ。だから、問題ない!」

 「……はぁ〜」

 一通り自己紹介が済んだ所でドリンクを手に取って乾杯をした。

 涼とマスターは女性陣を楽しませる事に徹し、それを冷やかな視線で俺と桜乃は見守る。だけど、杏とイリヤが楽しそうにしている姿を目の当たりにすると、これはこれでアリなのかも知れないと少し心が揺らいでしまう。

 ——だが、馬鹿共が間違いを犯さないように目を光らせる事は忘れない……。

 各々談笑をしている最中、桜乃が立ち上がってキッチンの方へと向かい。
 俺は何か手伝える事がないか、席を後にして追いかけた。

 「さ〜くの。何か手伝おうか?」
 「どうしたの? 突然……」

 俺の申し入れに驚いた桜乃は何か裏があるんじゃなかろうかと少し探りを入れるように俺の事をジロジロと見つめる。

 「いや、どうにもああいうノリにはついて行けんと言うか……」
 「ああ、確かに……。でも、同性の子と話せて私は楽しいかな」

 と、嬉しさを滲ませながら口ずさんだ桜乃は溜まっていた洗い物に着手し始めた。
 ふむ、手伝える事はなさそう、か……。

 「じゃ〜俺は行くけど、何か手伝える事があれば遠慮なく言ってくれよ」
 「了解。——でも、これとツケ代は別だからね」
 「……へいへい」

 全く、しっかりしとる……。
 痛い所を突かれてしまった俺は空返事で応答し、未だに盛り上がりを見せる戦場の地へ帰還する事にした。

 「どこへ行っていた〜。無愛想少年!」

 席に着くや否やテンションの上がった涼に絡まれてしまい。暑苦しく俺の肩に腕を回して来たが、それを丁寧に受け流した。
 そして、さり気なく涼の足を踏んづけてやったが、笑顔を崩す事はなかった。

 ——チッ。なかなか、やりよるわ……。

 俺は徐にテーブルに置いてあったペットポトルを手に取って、グラスに飲料水を注いで口に含ん——だ?