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(2)第二話 〜阿鼻叫喚の宴〜 其の四 ( No.21 )
日時: 2012/07/01 00:55
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0274ba/11/

 「——ゴホン。会長、お取り込み中すいません。女子生徒が一人、状況変化に追いつかず失神してしまっているようですので、早く保健室に運んだ方がよろしいかと……」

 誰もが見て見ぬ振りして行く中、勇気ある人物が暴走する望月会長に声を掛け、それを制止する。
 声を掛けて来た人物の言葉に素直に従った望月会長は俺から身を引き、少し物足りなさそうな表情を浮かべた。

 ——た、助かった〜。
 どこの誰だか分からんが、感謝しないとな……。
 俺は制止してくれた人物に感謝の言葉を掛けようと、その人物に視線を向ける。

 「助かった、ありが——とう?」

 視線の先には黒髪ツインの前髪ぱっつん少女——摺木麻耶の姿があり、彼女は蔑むような冷たい視線で俺の事を見つめていた。

 「——ま、麻耶ちゃん。落ち着いて落ち着いて。これは軽いスキンシップじゃない」

 見るからにご機嫌斜めな摺木をなだめようと慌てた様子で望月会長が釈明するが態度は変わる事無く、俺たちの事を軽蔑し続ける。が、

 「……分かってますよ、会長。私はちゃ〜んと分かってますから……。——新堂くん」
 「あ、はい!」

 突然、話を振られ。俺はなぜか、優等生染みた元気の良い声を発してしまった。

 「早く、杏ちゃんを保健室に運んだ方がいいわよ。本当に失神してしまっているから……」

 そう淡々と語った摺木は校門前に向かい。
 望月会長が職務放棄した生徒たちの出迎えを代わりにし始めた。

 「えっと、新堂くん。私も職務に戻るから早く杏ちゃんを保健室に運んであげてね」

 真面目な副会長に触発された望月会長が笑顔でそう言い残し、持ち場に戻って放棄した職務を勤め始めた。
 ……はぁ〜。
 朝から疲れるなぁ〜。
 俺は摺木や望月会長が言うように杏が本当に失神してしまっているのかを確認するために少し強めに身体を揺すってみたが、無反応だった。なので、渋々ながら保健室に運ぶ事にした。

 高等部校舎一階にある保健室に入ると保健医の姿はなく、勝手に保健室のベットを使わせてもらう事に。
 ベットに杏を下ろすと——杏は目を見開いたまま失神してしまっており、年頃の少女が目を開けながら寝るのはいささか名誉に関わる事なので、俺は杏のまぶたを閉じてから横に寝かしつけ、布団をかけてやった。

 ——さてと、自分の教室に向かうとしようか……。
 やる事を済ませた俺は保健室を出て、自身の教室である二年二組に向かう。

 教室に入ると校門前で繰り広げていた俺と望月会長の行為をクラスメイトの誰かが目撃していたのか、クラスメイトたちがひそひそ話をしながら俺の事を奇異な視線で見据えて来るではないか……。
 ホント、昨日と今日とで、俺のお株はだだ下がりだな……。
 手厚い歓迎を受けながら俺は自身の席に向かい、ゆっくりとその重い腰を下ろした。

 ただ、小柄のなよなよした女々しい男子生徒の熱烈な眼差しが少し気になったが、これは俺の自意識過剰による勘違いだろと踏み。
 先方の事は気にせず、授業に臨む事にした……。