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(1)序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の四 ( No.7 )
日時: 2012/06/11 00:40
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0270ba/5/

 ——翌日。
 毛布の心地の良い感触を名残惜しみながら、今日から始まる新学期……。
 僕は無事、進級を果たして本日から二年生となった。

 しかし、特にこれと言った特別な思いがある訳でもなく、いつも通りの朝を迎える。

 二階の自室で、ある程度の支度を整えてから一階の居間にいつも通りに向かう。
 居間のテーブルに置かれた朝食を時間たっぷり使って食べる。
 普段なら悠長な事をしていられないかも知れないが、今日は午前中——始業式をやる事になっていた。
 だから、僕は始業式だけをすっぽかして。
 どのクラスに編成されるかの確認をしに行くだけの予定を立てていた。

 別段、始業式に行かなきゃならんほど、重要な事でもないし。
 僕と同じような考えを持つ生徒が他に結構いたりする。

 ——ふぅ〜、そろそろ行くとしようか……。

 僕は食べ終わった食器を水にさらし、後で洗えるように施しておく。
 そして、少しダルさが残る身体に鞭を打ちながら「のそのそ」と玄関に向かい、家を後にした……。

 ラッシュ時を大幅に過ぎた時間帯に家を出たものだから、通勤学者はほとんどいない。
 その少し寂しい道中を黙々と何気なく歩く少年が一人……。
 見渡す限り人っ子一人、車一台も通らない道を歩く様は何だか。

 ——この世界の最後の生き残りのような気がしてならない。

 それはこの静寂さがそう強く思わせているのだろうか、それとも……。

 そんな馬鹿っぽい考えを巡らせている内に、僕が通う平々凡々な公立高校に辿り着いた。
 すると、ちょうど始業式が終わったのか。
 生徒たちの憩いの場所たる中庭に人が「ぞろぞろ」と集まり出していた。
 その中庭に僕が求めるモノがある。

 僕は人ごみを掻き分けながら校舎の壁に沿って置かれたクラス表を覗き見ようと、試みたその時。

 ——背後から誰に思いっきり引っ張られ、後ろに戻されてしまった。

 それにはさすがの僕も不快感をあらわにし。
 僕はそいつの事を睨みつけるために振り返る。と、
 「ニヤニヤ」と気色の悪い笑みを浮かべる、見慣れた輩がそこにいた。

 「——キ〜サ〜ラく〜ん。お前、また式をばっくれただろ」

 僕の肩に暑苦しく腕を回して、気色の悪い笑みを近づかせて来る男子生徒。

 ——水無月アキトが出遭って早々、僕に苦言を呈してきた。

 「別にいいじゃん。そんな事よりも僕はどのクラスになったか確認しなければならん」
 「ああ、それなら心配いらないぜ。——俺たち一緒のクラスになったからな」
 「はぁ? お前と一緒?」
 「そう。……それと姉貴も一緒だぜ」
 「マジか……」

 アキトの言葉を聞いて僕は愕然とした。
 別にアキトと同じクラスになった事を嘆いた訳ではない。
 むしろ、後者の人物に対してだ……。

 ——水無月アスカ。

 一年の時もそうだったが、まさかまた同じクラスになろうとは思いもよらなかった。

 ——誰だ、このようなクラス分けをした輩は……。

 僕に何の恨みがある?

 それに片割であるアキトまでもが一緒のクラスとなると……。
 思い当たる節は一つしかないなよな。

 「暴君の抑止力たる生贄を二名用意した」って所、か……。

 ……はぁ〜。
 急遽、親の仕事の都合か、何かで転校出来ないかな……。

 「ん? どうしたんだ、キサラ」
 「いや、転校って——どうやったら出来るのかなって……」
 「……登校初日からお前は一体何言ってんだよ」
 「……お前、アスカと同じクラスなんだぞ。——その意味分かっているのか?」
 「……それを言うなら俺なんか姉貴と血の繋がった姉弟だからな。だから、キサラの一、二年間なんて俺にとったら一、二分程度だ。……我慢しろ」

 「——ねぇ〜。何を我慢しろってぇ〜?」

 『うわっ!』

 聞き覚えのある女の子の声が聞こえて。
 僕たちは思わず、ワザとらしいリアクションをして驚いてしまう。
 そして、恐る恐る声が聞こえた後方へ視線を向けると……。
 そこには怪しい笑顔を浮かべて、僕たちを見据える美少女が——。

 ……いや、美少女の皮を被った鬼神がそこにいた。

 鬼神は僕たちの肩をその人知を超えた力で握りしめ。その苦痛に堪らず、僕たちは表情を歪めた。

 「……あ、アスカ様いらっしゃったんですか……」
 「……お、お姉たま。ご機嫌麗しゅう……」
 「あら? 二人とも普段と口調が変わっているけれど……どうかしたのかなぁ?」

 不気味に微笑みながらそう話したアスカ様はさらに力を込めて僕たちの肩を握りしめる。
 僕たちの肩から「パキポキ」と怪しげな音が鳴り始める。
 恐らく、僕たちの肩が限界に達し、悲鳴を上げているようだ。
 それに身体から変な冷や汗が流れ始めた……。

 ふむ、このままでは粉砕骨折へ直行か……。

 南無〜だな……。