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 白き花びらに*を込めて ( No.19 )
日時: 2012/06/19 22:24
名前: 自分. ◆UpqMavj4tY (ID: zlsHcGtF)

—すき、きらい…

白い花弁がはらはらと指先から溢れる。

—すき、きらい…

ぷちり、と軽快な音を立ててたやすく千切れていく。

—すき、きらい、すき、………

残り一枚。すっかり寂しくなった花柄を見つめる。
仕方ない、そう自分に言い聞かせるように苦い笑みを口元に浮かべた。
散々引き抜いてきた花びらは、青い芝生の上に敷かれた白い絨毯のよう。
夕暮れ色に染まる河原を眺めながら、芝生に座り込んで花占いをしている自分。
こういう行為をしていると、何だか感傷的な気分になる。


「きら…」

「おい、そんなとこで何やってんだよ」

“嫌い”の花びらを摘み、指先に力を入れたと同時に
背後から聞き覚えのある声が通った。
首をゆっくり後方へひねってみるとやはり、見覚えのある少年が立っている。

「何って、乙女の占い。」

問われれば正直に答えるまで。
私は手にしていた白い花……がたくさん付いていた花柄を
相手に見えるように自分の顔近くに持ち上げる。

「いい年して花占いとか…お前は小学生かっつーの。」

少年は呆れたように言い放ち、私の横にずかずかとやってきて
そのまま腰を下ろした。夕日に照らされた影が芝生に二つ伸びる。

「高校生が花占いしちゃだめって言うきまりなんてないもん、
何してようが私の勝手。そうやって突っ込むのやめて。」

ばかにされた気分がして、私は口調を強めて言い返す。
体勢は変わらず、最後の一枚を摘んだまま。

「相変わらずつっぱねた性格してんなー。…ところで何占い、それ。」

端的にそう述べると、少年は指差しをして私の持っている花の意味を尋ねてきた。
指を差されては自然と自分も手元の花に視線を落とす。

“嫌い”の花びらが、力無さげにくっついている様子がだんだんとおかしく見えてきた。




「………マーガレットで今日の夕飯占いしてたの。今晩は魚料理だって。」

私はにっこりと笑顔を作って、千切った最後の花びらを少年へと向けた。






(君への恋占いだなんて、言える訳がない。)

マーガレット…恋を占う、心に秘めた愛