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 冷雨と交わる*心 前編 ( No.21 )
日時: 2012/06/21 21:19
名前: 自分. ◆UpqMavj4tY (ID: zlsHcGtF)

雨が降っている。

小雨とか霧雨とかそういうレベルじゃない。
例えれば、バケツをひっくり返したような土砂降りだ。

無様にも傘を持ってくるのを忘れた僕は学校の玄関先で立ちすくんでいた。
委員会の仕事で遅くなったのだ。
傘に入れてくれるような級友は既に帰宅している頃だろう。
せめてこの酷い土砂降りが弱まるのを待ってから帰路に着こうと、
ぽつんと独りで学校の玄関先から見える雨でくすんだ風景を眺めている。

ざあざあと地面に叩き付けるように落ちる雨粒。
時折、跳ねた水滴が腕に触れて冷たい。
もやもやとした灰色の空の下、僕の心までどんよりとしてきた。


すると、背後から足音が聞こえてきた。

反射的に足音の方へ視線を向ける。
黒髪の女子生徒………ん、見たことがあるような。

目があった。僕は思わず視線を宙へと逸らす。
あぁ、思い出した。彼女は僕のクラスに最近やってきた転校生だったのだ。
いかにも真面目そうな外見に、大人びた雰囲気から未だにクラスに馴染めていない。

転校生は僕と距離を少し開けて、横に並んだ。
——……気まずい沈黙が流れる。
誰かを待っているのだろうか、それとも僕みたいに
雨宿りをしているのだろうか。

「えっと、君も傘忘れたの?」

沈黙に耐えかねて、僕は思い切って声を掛けることにした。転校生は僕のことが分かるだろうか。

「…持ってきてる。折りたたみ傘。」

一拍置いて、言葉が返ってきた。
そして転校生は肩に掛けた鞄に手をかけた。
きっとその中に傘が入ってるのだろう。
…じゃあ、何で帰らないんだろうか。そんな疑問が湧いたが
そこは個人の事情があるのだろう。僕は気にしないことにした。

*後編>>22につづく*