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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 冷雨と交わる*心 後編 ( No.22 )
- 日時: 2012/06/21 22:45
- 名前: 自分. ◆UpqMavj4tY (ID: gDKdLmL6)
*>>21のつづき*
再び重い空気となる。言葉のキャッチボールが続かない。
転校生の先程の声はやけに大人っぽくて、何故だかどぎまぎしている僕がいる。
クラスの女子と話すときはこんな事は無いのに。
都会の同い年の女の子は皆そういうものなのか、などと思案気にふけっていると、
今度は転校生から会話を投げかけてきた。
「あの花綺麗。」
会話というか、独り言だったのかもしれないが。
転校生の視線は玄関の右隣の花壇の方へと向いていた。
梅雨の時期にはぴったりの紫の花々が咲き乱れている。
“花”という単語に反応した僕は、間髪入れず口を開いた。
「あ、あれ環境委員が世話してる花壇なんだよ!」
やけにテンションが上がった理由は、ただ僕が環境委員だったからである。それだけだ。
そんな僕には目もくれず、転校生は視線を花に向けたまま
「へぇ……でも私、あの花好きじゃないかも。」
と、そんな辛辣な言葉を僕にぶつけてきた。
転校生も僕と同じく花に興味があって、会話にも花が咲く——と思ったが
大いなる計算違いだった。
僕が何かフォローを入れようと開きかけた口は、転校生の言葉によって遮られた。
「たくさんの花が群れて咲いてるんだもん、あの花。それだったら、一輪で咲いてる花の方が、凛としていて好き。」
その言葉には、まるでクラスで馴染めない彼女自身の気持ちが込められている様で——
きっぱりと断言しては、ゆっくりと顔をこちらに向けると、
教室ではめったに語らない転校生が、僕の目の前でふっと微笑んだ。
その瞬間だけ、激しい雨音が止んだような気がした。
(あれ、この気持ちは一体……?)
あじさい…冷たいけれど、美しいあなた・高慢
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