コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- もどかしい*の返事 ( No.28 )
- 日時: 2013/02/05 15:40
- 名前: 自分 (ID: n5JXVFg7)
1回目は多分失敗してしまったのだろう。
あれは思い出すのも嫌な夏の始まりの日。
ミンミンゼミだかアブラゼミだか知らない虫の鳴き声が耳につく木陰の下。
私は人生で初めての賭けに出た。
当時、意中の相手だった同じ写真部の先輩を呼び出したのだ。
先輩後輩分け隔てなく対等に接し、部活動では素敵な写真を位ともたやすく撮ってしまう。
いつしか私はそんな先輩を目で追うようになっていたのだった。
シュミレーションは完璧。校庭裏の涼やかな木陰で告白すると決めていた。
最高速度で刻む鼓動に何とか耐えつつ、手を固く結び先輩を待った。
「・・・お、いたいたー。」
来るのは当たり前なのに、私の全身がその一声で強ばる。
「先輩、」
のどがやけに乾くのは、夏の暑い気温のせいだ。
私、緊張なんてしてない。いけるいける。
呼び出されやって来た先輩は、何食わぬ顔で私の方へとやって来た。
「いやぁ、今日もあちーなぁ。・・・で、何か用?」
先輩の無邪気な表情。対する私は余裕のない表情を浮かべていたであろう。
ついに、時がやってきたのだ。
「先輩、私、先輩のことが好きです。」
思い出したくないと言っておいて、がっつり覚えているあの夏の日。
結論から言うと、答えは「保留」それか「無回答」になる。
あの後先輩は面食らった表情をしていたが、すぐにいつもの能天気な笑みを浮かべた。
「またまた〜。もしや、この暑さでどうかしちゃった?」
玉砕である。世間ではこれを「振られた」と言う。
しかしその後も諦めきれず、未だに先輩に情を抱いている。
私は今、写真部での写真の選別中だ。
今まで撮りだめしておいた写真の善し悪しを決めている。
そして隣には先輩が黙々と作業をしている。
私たちはあの日以来、関係が変わることなく先輩後輩を続けているのだった。
ふいに肩を叩かれた。
ぱっと顔をそちらへ向けると、先輩が1枚の写真を寄越してきた。
写るのは一面の鮮やかな紫、・・・・・・ラベンダーだ。
「いい写真だろ、それ。」
お決まりの笑みを私に向ける先輩。
その笑顔から再び写真へと視線を落とす。
相変わらず、私には真似できない綺麗な写真を撮るんだ。
「自信作ー!ってわけで、それあげるよ。」
「・・・先輩。」
あぁもう、先輩は私の事を一体どう思ってるんだ。
私はあの時から頑張ってこんなに一生懸命なのに。
そうやって気があるような素振りをしちゃってさぁ。
紫の写真の端を力強く握った。
「いい加減、私に返事を下さい。先輩。」
ラベンダー…私に答えてください