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Re: ▽cram school story *塾ヲ攻略セヨ!!* ( No.16 )
日時: 2012/06/24 12:53
名前: 神崎仁 ◆bbWfSKYEhU (ID: z8eW1f9u)

07. 東咲先生side


「じゃあ今日は、まず小テストからなぁ〜」

「えぇ!!!!!」


お決まりの反応だな。思わず心の中で笑ってしまった。



「ついでに、-3ミス以上は追試だぞ」


「えぇ!?」「そんなの無理!!」皆がそうざわめいているさなか、新里だけは、無表情。



「お?新里は余裕か?」


と言うと、新里は全く表情を変えず「当り前です」と言う。
その言葉に皆、静まり返る。


「一回学んだことなんて、復習さえすれば完璧に決まっているでしょう?」


冷たい言葉に返事するものはなく、ただ、新里を見ていた。
その皆の目も、冷たく氷のようだ。


「…ほらっ!始めるぞ!筆記用具以外はしまって」





結果、追試は山口のみとなった。
勿論新里は余裕の満点。
ほかのみんなはギリギリ、-3にとどまった程度だ。


「では、さようなら」

「さようなら」


皆が家に帰ろうと片付けする中、追試の山口はただ一人ワークを開いていた。
ブツブツと念仏のように聞こえてくるのは、歴史の単語だろうが殆ど聞き取れない。



「…足利義満がやったことって…?」


「それは…」と言いかけたとき


「明との貿易」


さえぎられる声。
その声は、山口の隣の席の新里のものだった。
皆帰ったなか、彼女だけ残っていた。



「勘合貿易とも言われるけど…。足利義満が倭寇の取り締まりをすることを条件に明…今でいうところの“中国”と貿易したの」


模範解答のような説明。
山口は、目をキラキラと輝かせた。


「すげぇ!漓玖、超頭いい!」

「はぁ? 別にこんなの普通よ///」


明らかにテレながら言う新里。
僕は、「かわいいじゃん」と心の中でつぶやいた。
本当に言葉にしてつぶやいたら、新里の冷たい目で僕は氷になっちゃうから。


「じゃあ、テストの紙もってくるからな」


そう言って一階にある教員室に向かっているときだった。
階段の踊り場に着いたとき。



「…だよね」



一階のロビーから聞き覚えのある声…。 あぁ。新里と山口と同じクラスの女子じゃないか。
僕は、気にせず通り過ぎようと思った。
しかし…


「新里さんって、なんか怖いよね」
「っというか、腹立つ」


思わず立ち止まってしまった。
僕は、踊り場に身を隠しその話を聞く。



「暗くて、近づきにくいんだよね…」
「わかるわかる」
「しかも今日の社会の時の言葉、超天才ぶってるよね」


クラスメイト達は、そのまま塾を出たが僕は茫然としていた。
人の悪口を生で聞いてしまうと、誰でもそうなってしまうだろう。
辛かった。
でも、何も言うことはできない。
確かに、彼女は無表情で冷たくて怖い。
でも、天才ぶってるわけではないと思う。

彼女は思ったことを言ってるだけで、決して自ら天才ぶってるわけじゃない。
そう言ったって、誰も納得しないだろう。
だって、僕はそもそも違う人間で彼女と会ったばっかりの新参者。
そんな新参者が、何年も一緒なクラスメイトに勝てるわけない。


「…女子って難しいな」

そう、呟くことしかできなかった。