コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.104 )
日時: 2012/11/18 11:33
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第六話Ⅵ*ライバルは突然に

「次,あれ!」
友架の指の先にはコーヒーカップがあった。

「きつ……」

フリーパスのおかげで,ジェットコースターやお化け屋敷など,様々なアトラクションを体験した京は限界だった。

「フリーパスです!」

そう言って元気にゲートをくぐる友架を見た。

「ん? 早く行こ!」

友架が京の手を引く。
軽い嫌悪感に包まれる手を見て,京は思い出していた。

『あの友架って子と手、つながないで。私だって、きょんちと手つなぎたいから』

そう言って京を見つめる,美湖の寂しそうな目を。
コーヒーカップは酔うばかりで,京は作り笑いさえもできなかった。




「はぁ,まったく……京君ったら,私の事なんか頭の中にないでしょ? そこに,あるのは……あの女の子ばっかり……」

薄暗くなってきた空の下のベンチで,酔った京の隣に座った友架はつぶやいた。
頭を下げていた京の髪がゆれる。

「美湖が,見えるのか」
「うん。黙っててごめんね。本当は……京君とデートしても,こうなる,って分かってた。授業中だって……うるさいくらいだよ。私が,引っ越したら,ちゃんと……真面目に,授業受けなさいよ?」
「はいはい」

京は再び頭を下げた。
そうか,引っ越すんだったっけ。


「京君。引っ越すまでの間,美湖ちゃんみたいに『きょんち』って呼んで言い?」
「駄目」

京が即答すると,友架は微笑んだ。
そして口を閉じ,静かに沈んでいく太陽の光に身を任せていた。




「本当に,大丈夫? 熱あるんじゃない?」
ぽつぽつと街灯がつく遊園地の一角で,友架はいまだに頭をさげている京の顔をのぞき込んだ。

そっと,京の額に手をあてる。

驚いて友架の方に顔を向けた京に,友架の顔が近づいた。