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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.111 )
- 日時: 2012/11/18 11:38
- 名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)
第六話Ⅸ*ライバルは突然に
京が部屋のドアをあけると,そこには誰の気配もなかった。
美湖は先に帰っているはず。
だとすれば————。
考えるよりも先に,京は玄関を出た。
そして,その足は眩しいほどの黄色が放たれている場所へと向かっていた。
「美湖……」
京の思った通り,美湖は向日葵畑の前にいた。
美湖は振り向き,京を見ると,力無しに笑った。
「きょんち……私……ヒトに嫉妬した」
京の髪が夏風に揺れた。
心地よいその音は,どこか遠くへ流れていく。
「私……」
言葉が出てこない美湖を見てると,壱知の言葉が脳裏に浮かぶ。
『俺なら美湖ちゃんを救える。幸せにできる。……お前はどうだ』
心の奥に霧がかかる。
自分ではどうしようもないような,苛立ちがつのった。
京は自分を落ち着かせるかのように軽く息を吸った。
「美湖。不安にさせてごめんな。……俺も,不安でたまらないんだ。俺は親父ほど力もないし……正直言って,美湖を守れるかどうか,自信がない。だけど,俺は————」
美湖と目が合った。
美湖は瞬きもせずに,大きな瞳を固めている。
「俺は,美湖を守りたい」
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