コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.127 )
日時: 2012/11/18 11:42
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第七話Ⅱ*君に

授業はすでに始まっていた。
美湖は教室に入る気になれずに、学校内を見て回ることにした。

京の学校は、新しい訳でも古い訳でもなく、環境的には過ごしやすかった。

階段までたどりつき、ふっと顔をあげた。
上から差し込む、まぶしい光が美湖の目を襲う。

その光に吸い込まれるように、美湖はゆっくり階段を上って行った。




昇るにつれて、風が強くなる。
美湖の存在を無視するかのように吹き続ける風は、屋上の扉から漏れていた。


「あ……」

屋上には、少女がフェンスに寄りかかり、空を見ていた。
少女の黒髪は風に操られ、光と共に輝きを増す。

真剣に空をみつめる少女の姿は、どこか悲しそうに見えた。


ふいに少女の顔が美湖に向く。


「————あなた、明苑寺京の————」


美湖は、何となく、少女は自分が見えるような気がしていた。
驚くこともなく、少女を見つめる。


「……何か言ってよねー。何か、恥ずかしいところ見られたな」

少女は頬を膨らませ、また空を向く。

「あたし、花風侑。よろしく」
「私の事は美湖でいいよ。————それよりも、あなた————」

侑の視線が下がった。

「悲しそう、とでも言いたいんでしょ。よく言われるわ。……あなただけ、あなただけに教えてあげる」

悲しそうな目を侑は美湖に向けた。

「篠田壱知……って知ってる?」