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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.161 )
- 日時: 2012/11/17 19:47
- 名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)
第七話Ⅹ*君に
「ただいまー」
「こんな時間まで何してたんだよ,お前」
「へぇー,もしかして,心配してくれてる? へへっ,そっかー」
美湖が笑うと,京は目を細めた。
しかし,返答することはせず,その場に腰を下ろす。
「へへっ」
美湖が侑と壱知の幸せそうな姿を見てきたとも知らず,一見奇妙な美湖の様子に京はため息をつく。
「今日,きょんちテンション低いね? 何かあった?」
「美湖が高いんだよ」
やっと,少しながら笑顔を見せてくれた。
京につられ,美湖も笑顔になる。
「あのね,きょんち……」
「何」
ふと目が合う。
美湖の胸の奥が高鳴る。
あ,やっぱり,私,きょんちが好きだ。
愛しくて,愛しくて,どうしようもない。
一緒にいるだけで心が満たされて,幸せで。
侑と壱知をみて,思った。
「好きだよ————」
「……っ」
京が目を見開く。
全てが愛おしい。
「————ってきょんちに言える私は,幸せ者だね」
幸せ。
好きな人に好きと言える。
それだけで,幸せ。
京は額に手を当て,俯き,深呼吸を繰り返していた。
「美湖,その笑顔は季節外れ」
「え?」
ふっと顔を上げた京の顔は赤く染まっていた。
美湖は目を丸くして,京を見つめる。
京が,また言葉に詰まった。
ひと時の沈黙を隔てて,声にならない息をだし,京は壁に寄り掛かる。
両手の甲で目を隠し,声を漏らした。
「くそ,もう無理。美湖……好きだよ」
部屋は満ち足りた空気に包まれる。
冬もすでに始まっている,この季節。
もうすぐ年が明ける世の中で,美湖は田舎のとある部屋で,向日葵の笑顔を愛しい人に向けた。
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