コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。  -Himawari No Kakera。- ( No.21 )
日時: 2012/10/14 13:20
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第二話Ⅱ*孤独×自立


「洋平、何か怖くない?」



夏愛がそんなことを言い出したのは、結婚して3年が過ぎた時だった。


「怖いっていうのは、んーと、霊的な怖さで……。私は全然霊感ないんだけどね?? 瑠司がね……」

夏愛が1歳くらいの小さい男の子を抱きしめ、手を優しく包む。


「時々、一つの場所をじーっとみて、『ああー』とか声を出すの。まるで、誰かと話しているみたいに」

夏愛は、そういう瑠司の姿を見てから、聞こえるはずのない声が聞こえるようになった、と付け加えた。


「幻聴だろ? 心配すっから聞こえるんだ。大丈夫だから、安心しな?」

夏愛を落ち着かせては見たものの、洋平の胸に霧のようなもやもやした感情が生まれた。




 美湖——————。



実際に、洋平も息子が見えぬモノと話しているのを見たことがあった。

「あーぶぅ……きゃっきゃっ」

声を出していたかと思うといきなり笑いだしたり、教えてもいない手遊びをやったりする。





その『見えぬモノ』が美湖だと確信したのは、瑠司がきっかけであった———。




「また話してる」

いつものように、一人で「あー」とか「うー」とか言っている。
だが、その日の瑠司の目はいつもに増して真剣だった。

「みぃーぶぅー」

必死に口を縦に横にと動かして、発音しようとしている。
『見えぬモノ』に言葉を教えてもらったいるのだろうか。

「みぃ……ぶ、ほ」


み……?


「みぃー、ぐぉ!」


言い終えると、瑠司は嬉しそうに笑った。




みー……こ。




洋平には、そう聞こえた。

みこ。
美湖。

そういえば、あいつ、保育士になりたいって言ってたな。

泣いている子を笑顔にさせるのが上手だった。
すごく年の離れた、小さな弟をいつも連れて歩いていた。

『ほーら、拓翔ー、洋平クンですよ〜』

よだれがついている拓翔の顔を洋平に近づけ、嬉しそうに笑う美湖の姿を思い出す。


自然と、涙があふれていた。




「ぱぁーぱー」

泣いている洋平に気づいた瑠司は、静かに涙のあとに手をおいた。
洋平には、その手が、まるで美湖の手のように感じられた。


美湖が今、俺の頬に……。


満ち足りた気持ちになった洋平は、軽い息子を片手で持ち上げ、その場を去った。