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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 向日葵の破片。 -Himawari No Kakera。- ( No.29 )
- 日時: 2012/10/14 13:24
- 名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)
第三話Ⅰ*さよなら
「洋平ー、待ってよー」
スタスタと前を歩く洋平に声をかける。
洋平は振り返った。
「美湖! おっ前、今まで何処にいたんだよ! 何年も居なくなりやがって……っ。もう、何処にも行くなよ。俺のそばに居ろよ」
洋平が美湖に手を差し伸べる。
「洋平……。うん、洋平と一緒に居る」
洋平の手を握り返す。
え……?
握れない。
確かに、洋平の手に————。
はっと気づくと、洋平は遠くに立っていた。
「洋平っ!」
その隣には、瑠司を抱いた夏愛が居た。
「じゃあな、美湖。さよなら」
「な、何言ってるの?洋——!」
洋平は消えた。
パタン————。
その場にへたり込む。
風が吹く。
美湖の髪が左へ流された。
向日葵。……の、花びら。
集まって大輪の花を咲かせるときの華麗さの面影はみじんもなく、ただひらひらと舞い、空中をさまよう。
「君は、誰」
急に背後で声がした。
振り返る。
が、人影は向日葵のまぶしいくらいに鮮やかな黄色にかき消される。
「はっ」
今、夢……みたいなの、みてた。
洋平追いかけて、居なくなって、向日葵が散って、誰かが……居て。
……というより、ここはどこ?
さっきまで洋平の家に居たのに……。
古い、木造の家。
落ち着くような、落ち着かないような、不思議な家。
「こんにちは」
また背後で声がした。
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