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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 向日葵の破片。 -Himawari No Kakera。- ( No.35 )
- 日時: 2012/11/18 11:14
- 名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)
第四話Ⅰ*出会い
ばいばい、洋平————。
本当は、別れたくない、離れたくない。
でも、現実はそうはいかないって事くらい…わかってる。
美湖は近くの道を歩いた。
自分がここに居ることの意味が分からなくなっていた。
「あ、向日葵」
神社の近くに数えきれないほどの向日葵があった。
その黄色がまぶしい。
美湖は目を細めた。
そういえば、夢の中に……。
『君は、誰』
ささやくような、低くて落ち着く声。
「君は、誰」
同じ声がした。
デジャヴ!?
急いで振り返る。
今度は、夢のように、向日葵の明るさにその人物の姿がかき消されることはなかった。
声の持ち主は、黒い、さらさらの髪をしていた。
「君は?」
「み……美湖です。あなたも、私が……」
今まで無表情だったその人が軽く微笑んだ。
「見える。『あなたも』って事は、親父にも会ったのかな」
「明苑寺さん……って」
「うん、俺の親父」
淡々としているけれど、どこか心に響く話し方は、さわやかな夏の風にぴったりだ。
洋平との別れでぐちゃぐちゃになっていた美湖の心は、だんだん整理されていった。
「あなたの名前も教えて」
「だから明苑寺だって」
「その次」
美湖が困っていうと、その人は意地悪そうに笑う。
意外とよく笑うんだ。
「きょう。明苑寺、京」
「京……きょんち」
「は?」
美湖は京を見た。
一瞬、心臓が高鳴った。
「……きょんち、って呼んでいい?」
「何で」
「いいじゃん」
セミがうるさい。
京は俯いて、よく表情が見えなかった。
ふいに京が顔をあげた。
固い表情をしていた。
「可愛くねー女」
言った後に京の表情が緩んだ。
神社に向かって歩いていく京の後を、美湖はついて行った。
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