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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 向日葵の破片。 《オリキャラ募集!》 ( No.44 )
- 日時: 2012/11/18 11:18
- 名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)
第四話Ⅲ*出会い
「ぐっ……ひくっ……くっ……」
「いつまでも泣かない」
京は無表情でそう言い放った。
「ばか」
「は?」
泣き止まない美湖の言葉に京は目を見開いた。
「ばか……きょんちなんて……ばかなんだから……」
京はふっと笑った。
まだ会って間もない人間から言われたのだと思うと、余計に面白かった。
しかし、美湖の言葉に言葉を紡ぐことはせず、無意識に庭に目をやった。
風鈴が揺れている。
心地よい。
京は、ゆっくり目を閉じた。
「きょんちー……おーい、起きて……あのー、ばかと言った事は謝りますーだから、どうか、起きてくださーい」
京は目を覚ました。
「あれ……俺寝てた?」
「ええ、それはもうばっちり」
さっき京を起こす時に謝罪していたはずの美湖は急に笑顔になった。
「寝顔、可愛かったなー」
京は美湖をにらんだ。
「……知ってるか? ばかと言った奴がばかだ、覚えとけ、ばーか」
「小学生みたい」
完全に流れを美湖のものにされた京は黙った。
美湖はまだ笑っている。
その笑顔を京に向けた。
「っ」
今まで見たことがないくらい、美湖の笑顔はまぶしかった。
大輪の向日葵が一気に花開いたようなまぶしさ。
『私みたい』
決して自分の笑顔のことを言っているのではなかったが、京は、向日葵を自分に例えた美湖に納得できた。
「あのね、きょんち……私ね……」
笑顔の消えた美湖がつぶやいた。
「多分、多分だけど」
落ち着かない声色が気になった京は、美湖を見た。
「きょんちの事、好きになる」
言い終えて、また美湖の顔に大輪の向日葵が咲いた。
「ありがとな」
京の言葉を最後に、夏の雰囲気で満たされた空間は静かになった。
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