コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。  -Himawari No Kakera。- ( No.8 )
日時: 2012/10/14 13:14
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第一話Ⅰ*別れ


カッ、カッ、カッ、カッ、カッ……————。


愉快な下駄の音がリズムよく響き渡る。

6時32分……。

洋平、怒っているだろうな。
少しの遅刻も許さないからね。

日向野 美湖は待ち合わせ場所である小さな公園に急いでいた。

髪のセットに時間がかかったって言ったら許してくれるかな?

淡い期待を胸に、慣れない下駄で、ただひたすら走っていた。
少なくともあと5分はかかる。
不機嫌そうに顔を背ける洋平の姿が思い浮かんだ。

花火大会という乙女イベントで周りはカップルだらけ。
その中に一人、美湖を待って男1人立っている洋平を思い浮かべると、さらに笑いが込み上げてきた。



もう少し。

「痛っ!」

立ち止まって見てみると、足にマメができていた。
気分は憂鬱。
痛みをおさえながら、美湖は公園にゆっくり近づいていた。


「美湖!」

洋平だ!
声を認識すると共に、洋平の姿も見えた。

「洋平! ごめん! マメできちゃってー……。今すぐそっち行くから——————」


愛しい彼の姿に元気がみなぎってきた美湖はまた走り出した。







しかし、それが命取りだった。






「み……美湖! やめろ! 来るんじゃねえ!」







甲高い音のほうを向く暇もなく、美湖の記憶は途絶えた。