コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.80 )
日時: 2012/11/18 11:26
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第六話Ⅲ*ライバルは突然に


ピピピピピ————

「……ん」
京はベッドから起き上がり、鳴り響く時計を止めた。
その瞬間に部屋の中は静まり返る。

……が、その静寂は早くも京の声で断たれた。

「……はああ!?!?」

時刻は9時半。
昨日の夜は、確か、8時半に設定しておいたはずだ。


「美、湖……」
京に背を向けて床で寝ている美湖を呼ぶ。
美湖は起きていたのか、びくりと体を震わせた。

「あ、きょんち、おは————」
「ん、おはようだって……? これはどういう事かな、美湖ちゃん?」

美湖は黙った。
京はベッドから降り、服を着替える。

「あのね、きょんちがデートに行かないように、行かないようにって思ってたら、時計の針が動いたの」

美湖が出てきた言葉を次から次に紡いでいく。
言い終えて、美湖は起き上がり、着替え中の京を見た。
短い悲鳴をあげ、また床に寝転がる。

「ほんと、恐ろしい奴」

京は軽く息を漏らした。
その息は笑い声になって美湖の耳に届く。

「……怒ってない?」
「うん」

京の返事を聞いて美湖は安心したようだった。
今度は本当に、スース—と音を立てて寝てしまった。



「いってきます」
寝ている美湖の耳元で囁く。
いきなり、美湖が起きて京の首に手を回した。
しかし、手は空を切る。

「あの友架って子と手、つながないで。私だって、きょんちと手つなぎたいから」

京は美湖の真剣な顔が愛おしく思えた。

「分かってる。じゃあな」

京は家を出た。
いつもに増して猛暑日だった。

京は、ゆっくりと待ち合わせ場所に向かった。