コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.83 )
日時: 2012/11/18 11:28
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第六話Ⅳ*ライバルは突然に


京が家を出た後、美湖はしばらく床に寝そべっていた。
ひんやりと冷たい床の温度を感じるはずもなく、ただどこかをじっと見ていた。

「さーてと、」

美湖は立ち上がる。

京についていく気はなかった。
しかし、胸の鼓動は早まっていくばかりだ。

何故だかわからない。
わからないが、胸騒ぎがおさまらない。

部屋の中を往復足を、美湖は止めることができなかった。




「ねぇー!!!? 何してんのー??」

思わず飛び上がり、声のした方を見てみると、ニカッと笑った京と同級生くらいの男子がドアに寄りかかっていた。

「……勝手に、人の家にっ……!」
「え、君もでしょ?ここ、京ん家だよね?」

男子は表情の作り方を笑顔以外に知らないといった感じだ。
美湖が頷くと、笑顔を崩すことはなく、言葉を繋いでいく。

「何か、気づかない?」

そう言って男子は美湖の顔を覗き込む。
一瞬、美湖の心臓は波打った。
……よく見ると、洋平に、似ていたから。

「霊……なんだ」
「そ、俺、霊なの! 死んでないけどね」

やたらとうれしそうに話す男子。
美湖はつかみどころがなく、ただ漠然と男子を見ていた。

男子によると、交通事故で意識不明の重体になり、それから2年間、ずっと眠っているらしかった。

「す、ごい。京の友達?」
「大親友! ちなみに俺の名前は篠田壱知。よろしくな!」

よろしくって言われても……。
美湖は疑わしく壱知の目を覗き込んだが、その目は透き通っていて、ほんの少しの濁りさえ許しそうになかった。

「うん」
「ところで、今日、京は?」

壱知がハ八ッと笑う。
自分で駄洒落でも言ったと思ったのだろうか。

「遊園地」
「誰と?」
「クラスの女の子と」

それを聞いて壱知の口の端は上がった。

「気になるだろ? それは、偵察に行かないとな!」