コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

向日葵の破片。 ‐Himawari No Kakera。‐ ( No.88 )
日時: 2012/11/18 11:30
名前: 透子 (ID: VEcYwvKo)

第六話Ⅴ*ライバルは突然に


「はい、京君!チケットね! 一日フリーパスだけど……そんなに乗る?」
「乗らない」

そう言いながらもフリーパスを受け取る京。

「来たからには乗らなきゃ勿体ないよ! はやく……あ、私、観覧車から乗るタイプなんだけど……行こ!」

今日の友架は話し方もサクサクしていて、笑顔も多かった。
京の手を引き、観覧車へと走った。

京にもいつの間にか笑顔がこぼれていた。




「……ふーんだ」

壱知に連れられて遊園地へ来た美湖は頬を膨らませていた。
早速、手、つないじゃったし。

「ライバル出現かー。やっぱり、見に来ない方がよかった?」
「ううん。あとできょんちにお説教するからいい」

行きたくない、と遊園地への偵察を一度は断った美湖に、壱知は聞いた。
植木に隠れている二人を、影がやさしく包む。


「あのさ、私たちって隠れなきゃいけないの?」
美湖が壱知の方を見た。

「勿論。京は俺らのこと見えるし、そもそも、京は俺がこうやって霊になってるって知らないからなー。そういえば、美湖ちゃんは何で霊なの?」

「はい?」

美湖は首をかしげる。

「なんで、成仏しなかったのかなーってこと」

美湖は黙った。
そういえば、私は何でこの世界に居るんだろう。

考えてみれば、洋平への未練のせいだった。
今、どこで何してるのかな、なんて、京に出会ってから思わなくなった。

風が吹き、植木の葉がさらさらと音をたてる。


「彼氏への、未練」
「へぇー彼氏いたんだ!」

それを聞いて一層むすっとした美湖に壱知は笑いかけた。

「ごめん! でもさ、京に触れたいなら、成仏して、生まれ変わった方が良いんじゃねーの?」
「……成仏」

美湖は遠くで回り続ける観覧車を見た。
美湖の心も何かぐるぐるとまわっているようだった。