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Re: 【短編】君の名を呼ぶ【恋愛初心者】 ( No.2 )
日時: 2012/07/17 15:54
名前: 茜崎あんず ◆JkKZp2OUVk (ID: 92VmeC1z)

*一雫*


物心つく前から、ソイツはいつも私のそばにいた。

「コハク」

私は彼のことをそう呼ぶ。
本当はただの幽霊くんでもいいんだけど、彼は私の名前を呼ばれるのが好きみたいだから。

「ねぇ、俺暇なんだけど」
「自分でなんとかしなよ。私はそろそろ学校行くんだから。ついてきちゃダメだよ」

言っても無駄だってことは知ってる。
六年間、コハクは毎日私の通学に付き添うんだ。

「コハク、いってきます」
「いってらっしゃい、彩刃」

ついてくるくせに。へらへらと笑顔で笑うムカつく幽霊にハエ叩きで攻撃してやる。

「痛いな〜、もう」

本当は透けて逃げれるくせに、わざと当たった。
そういうところがムカつくんですよ。もう慣れたけど。


「いってきます」

ランドセルを勢い良く背負った。

別にコイツはかけがえない存在ってわけじゃない。
いなかったらそれなりに寂しいとは思うけど。

先にいくほど透き通る白い手のひらが、私の通学を見送り、ゆらゆらと揺れていた。