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Re: 【短編】君の名を呼ぶ【恋愛初心者】 ( No.3 )
日時: 2012/07/17 18:54
名前: 茜崎あんず ◆JkKZp2OUVk (ID: 92VmeC1z)

*二雫*


「南雲さんは俺のことが好きだと思う」

「大葉くんは大ばかだから大葉くんなんだね」

そう言い捨て、自分の席へと向かう。
おー瑪瑙、さらっとフられたなーっ! そんな声が上がった。

「何が起きたの?」
「男子が誰がモテるか大会やってんの」

春喜ちゃんが答えてくれる。彼女は私の数少ない友達だ。
流れるような茶髪にゴツい黒フレームの眼鏡。
男子の周りを囲み、歓声を上げる女子たちを横目に見ながら、
「私は別に興味ないんだけどねー」
つまらなそうに呟く。

私と春喜ちゃんは仲が良いから一緒にいるわけではない。
女の子同士の派閥から二人ともあぶれてしまっただけなのだ。
小学生のくせに髪なんか染めちゃって。陰口を叩かれることの多い春喜ちゃん。
しかし彼女は屈しない。春喜ちゃんは強いのだ。授業参観の日だって春喜ちゃんの頭は依然として茶色かった。

強すぎる春喜ちゃんと無神経な私。
でも見捨てられたもの同士の私たちは普通の女の子よりも“友達”だった。
騙したり騙されたり、少しでも自分が優位に立つために他者を喰らい合う女という性別の食物連鎖。
私たちはそこからぽつりと離れているだけなんだ。

「あ、ステーキ食べたい」
「右に同じ」

一緒にトイレは行かないけれど、私と春喜ちゃんは今日も机を並べて給食を食べる。
沈黙の天使が頭上を飛び交うその下で、ゆっくりゆっくりと、咀嚼。
私の奥歯がこめを、たまねぎを、ほうれんそうを、ひきにくをすり潰す。

今日のご飯は具だくさんピラフだ。
でも今はまだ一時間目も始まってないから。