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Re: ホシゾラ ( No.25 )
日時: 2013/03/10 18:27
名前: おかき (ID: Mt9DoeXY)



「…まあ、確かに太陽の言う通りかもね、せっかくの天文部だし、もっと星について色々と語っていこうよ」


風斗はそう切り出した。


…とは言ったものの、生憎だが、おれらは語れる程度の星の知識は持ち合わせていない。


というおれの心の声を察したのか、風斗はこう付け足した。


「この中で一番星とかに詳しいのって、橋本さんだよね?俺あんまり星の事分からないから是非聞かせてほしいんだけど…」


突然のフリに、橋本は一瞬肩をビクッとさせ驚いていたが、やがて「…はっ、はいぃ…分かりましたっ…」とかなり恐縮気味に口を開いた。



「えっ、えっとですね…まずは……そうですね…あのっ……」



…口を開いたのはいいが……。


「…橋本、そっ、そんなに緊張しなくても良いんだぞ…?」
つられておれも申し訳程度に言う。


「うっ、うううううんっ!!わっわわっわ、分かった……っ!」

…本当か?















———やがて、橋本は目を閉じ、大きな深呼吸をひとつすると、ゆっくりと目を開けた。


今までとはまるで別人な、爛々と輝く目だった。



「日野くん」


「…えっ、あ、うん」


「日野くんの名前は、『太陽』だよね?」


「…そっ、そうだけど……」


「太陽って、日本の中でも呼び方が違うって知ってました?」


えっ、そうなn「そうなのっ!!?」


江野が食いつく。


「はい!沖縄で太陽のことは、『テダ』と呼ばれてるんです!その証拠に、沖縄には太陽神が降臨したとされる場所も残ってるんですよ!!」


「確かに、沖縄では他の地方では使われないような言葉が沢山あるよね」
風斗も関心を持ったように橋本の話を聞いている。


「太陽といったら、やはり次にくるのは月ですよね!このふたつについての話は、聞いてて損はないと思うんですよ!!もう本当にっ!!実はですね、太陽と月の起源にこんなものがあって……」












スイッチが入った後の橋本の話のスピードは速かった。


その後おれたちは橋本から、太陽と月の起源、日本で伝えられている太陽の神アマテラス・月の神ツクヨミノミコトの神話、果ては太陽と月の交点・軌道などについて色々と、本当色々と聞かされた。



たっぷり、およそ一時間ほど。













…人は、こんなにも長々と語れるもんなのか。



「—————…ハッ!!!えっ、あのっスイマセン!!わっわわ私っ!ついこう…ベラベラと喋ったら止まらなくなっちゃう癖があって…ほほ本当っ、そのっ……!」


「いやっ、別に謝ることじゃないと思うぞ?」
と、おれも一応フォローはしたが、正直なとこ、まさか橋本のキャラがこんなにも変わるとは思ってなかったから内心かなり動揺している。


「でっででででもっ!!…なんかこう…あのっ………やっぱりスイマセンっ!!!」「何でっ!?」


ああダメだ、元に戻った橋本はぶっ壊れたオモチャみたいに全然止まらない。(これなら、さっきの語り手モードの橋本の方が何とか扱えてたかも。)



「でも、すごくタメになったよ。ね?」

「本当本当っ!!奥が深いモンだね!」

「アマちゃん(アマテラス)ー、ヨミちゃん(ツクヨミノミコト)ー」


風斗、江野、東雲は、橋本の話に感動したらしい。橋本に、それぞれが感想を伝えていた。




「…えっ、その………えっと…」

三人からの突然の絶賛の声に困惑したのか、橋本の動きから次第に落ち着きがなくなり、周りをキョロキョロしたり、何かを言おうと口をパクパクしたりし始めた。




































「…あれ?」

「美雨ちゃーん?どうしたべー?」

突然、橋本の動きが止まった。





















「………動かないな」


「銅像みたい……」


(※この数日後に本人から聞いた話だと、橋本は緊張したり、ベタ褒めされたりすると思考が停止し、硬直してしまうのだという。)





6話中編・終