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Re: レモン色ドロップ。【短編集】〜リクエスト募集中〜 ( No.8 )
日時: 2013/01/19 15:42
名前: 上総 (ID: SnkfRJLh)

[ りんご飴 ] あひるもどき様リクエスト



「…………遅い」


私は今にも雨が降り出しそうな灰色の空を見上げて呟いた。


今日は待ちに待った夏祭り。
出店が楽しみ(特に好物のりんご飴が食べられる)なのはもちろん、恋人と一緒に回れるのが何よりの楽しみだった……のだが。

もう予定時刻より30分ほど経ったというのに、肝心の恋人が来ない。



ピチャ


ふいに耳の横で、水音がした。
不思議に思い空を見上げると、またもや水が降ってくる。


だけどそれは、水、ではなく。


「嘘!?」


突然の雨、だった。
確かに空はどんよりとしていたけれど、天気予報では午後から晴れる、とニュースできれいなお姉さんが言っていたはず。


当然、傘を持っているわけもなく。



とりあえず近くの店に避難すると、足元に違和感。
ふと見てみると、下駄の鼻緒が切れていた。
浴衣も崩れてきているし、雨はどんどんひどくなっていくばかりだ。



「どうしよう……」


恋人を電話で呼び出そうかどうしようか迷っていると、向こうのほうから何かが走って来るのが見えた。



(あれ……?なんか見たことあるような……)



「お前、何やってんだよ、」


息切れしながらそう言ったのは、紛れもなく私の恋人だった。



「何やってんのって……アンタを待ってたんでしょ!?」

「ああ……ごめん」

「“ああ…”って、何それ!」

「いいだろ、どうせ中止になったんだし」

「確かにそうだけど、こっちは10分以上待って……、」


私が途中で言葉を止めたのは、恋人がいきなりしゃがんだからだった。


(人が話してる途中だっつーの!)


「とりあえず愚痴ならいくらでも聞くから。俺が悪かった。だから、乗れ」


「へ?」


突然の言葉に、思わず間抜けな声が出てしまう。

乗れ、と言って背を向けた恋人に、どうしたらいいのか全然分からない。


「鼻緒、切れたんだろ。だったら歩けないだろうし、背負ってやるから」


(それって、)


おんぶして帰る、なんてドラマの世界だけだと思っていた私の脳内は、今の状況にいまいちついていけていない。


だけど。


(そんなこと言われたら、)



「……ありがと」


初めてこんなに密着したキミの背中は、思っていたよりもずっと大きくて。
どうしようもなく安心できる、温かい背中。



今の私の顔は、とても赤いのだと思う。




そう、りんご飴と同じくらい。





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あひるもどき様、リクエストありがとうございました!!

こんなんでよろしかったでしょうか?
甘いのかなんなのか……。
勝手にカップル設定だし、りんご飴あんまり関係ないorz

感想いただけると嬉しいです!