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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【恋愛とか】 きみとぼくのものがたり。 【短編集】 ( No.83 )
- 日時: 2012/11/25 18:06
- 名前: 甘月 (ID: SnkfRJLh)
1.こんな想い知らなかった
恋って、どんなものなんだろうと、ずっと思っていた。
甘くて、時々切なくて————そんな、綺麗なものなんだろうと、そう思っていた。
けれど現実は、そんなに甘くは無かった。
「おっはよー!」
朝だというのに、一際テンションの高い彼が、後ろから肩を叩く。
後ろから声を掛けられたから顔は見えないはずなのに、声だけで彼だと分かる。
触れられた肩が熱くなる。
その熱はやがて全身に回って、自分の中にある“想い”を加速させる。
それは誰にもコントロールできなくて、もちろん自分でさえも止められない。
「お、はよう……」
自分の考えていることが彼に全部バレているようで、口から出た言葉は途切れ途切れになってしまう。
不審に思われなかっただろうか。
そんな思いとは裏腹に、彼は教室へ入っていく。
彼が一歩、教室へ踏み入れば、クラスのほとんどが振り返る。
挨拶を交わし、時には笑い合い、時には立ち止まり、会話を始める。
それを見ながら、やはり彼は人気者なんだと再確認する。
と同時に、彼とは正反対な自分が恨めしく思えてきてしまう。
(私なんかが、想っていていいんだろうか)
考え込んでしまうのは、私の悪い癖だ。
けれどいくら考えてみたところで結論なんか出ない。
(こんな想い、知らなかった)
恋というものは、想像とは全然違っていて、
醜くて、
残酷で、
こんなにも胸が痛むもので、
けれど、紛れもない現実だった。
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