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- Re: 【恋愛とか】 きみとぼくのものがたり。 【短編集】 ( No.84 )
- 日時: 2013/01/19 16:54
- 名前: 甘月 (ID: SnkfRJLh)
[ 腹痛はしあわせの証 ]
ヤバい。
何を話したらいいのかが全然分からない。
頭が真っ白になって、何も思い浮かばない。
「どうしたの?」
「い、いや……」
急に尋ねられて、しどろもどろになってしまう。
ズズズッと音が鳴って、飲んでいたコーラが無くなったことを知る。
中学生の自分が大学生の彼に恋をして、なんとかこうして一歩踏み出したまでは良かった。
けれど、中学生の自分が行けるところなんて高が知れているわけで。
とりあえず行きつけのファーストフード店で飲食をしているのである。
だが、大学生と話すことなど全くもって思いつかない。
同級生の男子と話すのは慣れているはずなのに、緊張してしまって何も言えない。
そもそも、大学生はどんな会話をしているのだろう。
考えてみれば、彼の好きなものも趣味も、何も知らない。
「それにしても驚いたよ、いきなり電話がかかって来たからさ」
それは、迷惑、という意味も含まれているのだろうか。
確かに出逢いは突然だった。
この店で友達と話していたところの、隣の席に座っていたのが彼と、その友達であった。
しかも偶然なのか何なのか、彼は友達の兄だったのだ。
ともかく、一目惚れだった。
彼の笑顔はキラキラと輝いて見えて、それからその友達に連絡先を聞いて。
「すいません、なんか突然」
一応謝っておくと、彼は大丈夫、と柔らかく笑った。
その笑顔もまた輝いて見える。
ふと時計を見ると、そろそろ帰らなくてはならない時間だ。
「そろそろ行こっか」
雰囲気で汲み取ってくれたのか、彼がそう言って立ち上がる。
店を出てゆっくりと歩きだすと、空は赤から黒へ変わりそうだった。
(かえりたくない)
正直、そう思う。
足を踏み出したくなくて、ゆっくりゆっくり進む。
「じゃあ、またね」
そう言って、優しくポン、と私の頭に手を置いた彼は、夕暮れの街へ消えて行った。
徐々に小さくなっていく背中を見送りながら、顔が熱くなるのを感じる。
撫ぜられた頭はまだ余韻を引きずっていて、微かに熱を孕んでいる。
コーラを一気に飲んだせいで、お腹が痛む。
そこで、そういえば自分が胃腸が弱いことを思いだす。
(またね、ってことは、)
(また、逢ってくれる?)
ずきずきと痛みだしたお腹が、さっきのことが現実だと物語っていた。
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中学生と大学生って、あんまり現実ではありえないですよね。
まあそこはフィクションなんでね。
と言いつつこれ半実話なんですけれども。