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第5話「作り笑顔」

「おはよッ♪真央」
いつものように結衣が笑顔であいさつしてくる。
「おはよ…」

昨日の事が気になって、明るくあいさつを返せない。

「どしたの?」
結衣が、俯いている私の顔を覗き込む。
「ううん!なんでもないよッ!」
私は、笑顔を見せ明るく振舞った。

「おはよう。東條さん、結衣」
話しかけてきたのは駿くんだった。
「おはよッ♪駿☆」

私は、瞬間心が締め付けられた。

——どうして、お互い名前で呼び合ってるの?

——どうして、仲良く呼び捨てしあうの?

心が泣いていた。
悲しく虚しく…

——心が砕ける音がした。




◆　◇　◆　◇　◆　◇　◆　◇　◆　◇　◆　◇　◆　◇　◆　◇




「ね、真央は好きな人いないの?!」
昼休み。
結衣がいきなり問いかけてくる。

——いるよ…

——大好きな人くらい…

同時に、駿くんの優しい笑顔が頭に映る。

——あなたが好き…
——大好き…

どうしようもない想いが脳内を埋め尽くす。

「いないよッ…」
「そっかぁ。早く作りなよッ♪」
「うんッ…」
私は、笑って見せた。
でも。
きっと私の笑顔は引きつっていただろう。
でも、頑張って笑って見せた。

一生懸命

心配かけないように

笑顔を作った。