コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺の幼馴染みが橋の下に住みついたようです。 ( No.6 )
- 日時: 2012/08/22 19:42
- 名前: なちゅら (ID: Fhb4zUz0)
④神様
橋の下に、男女が3人座っている。
「あ———、その、何だ。つまり、お前は“神様”と。」
竜輝が、見るからに胡散臭いセールスマンといった格好の男を指差して聞く。その男は、他にも一般人とは異なるところばかりだったが。
「ああ、そうだって言ってんだろ。何回言えば分かるんだ。」
男はいらだたしげに答える。紅浬は、苦虫を噛んだ様な顔で、男の後ろに正座している。
「ふざけんじゃねええええええええええっ!!!!! 信じられるかそんなモンンンンン!!!!!!」
竜輝は腹の底から怒鳴る。男は耳を塞いだ。
現在地は、紅浬のことを見つけた河川敷——……ではなく、その河川敷の橋の下。
竜輝との電話で、男は脅すような低い声でこう言った。
『臼杵紅浬はこちらで預かっている。———お前の判断により、コイツの未来が決まる。“あの”橋の下で待ってるぞ———……。』
『おい待てよ!! ふざけ』
『おっと、意見は聞かないよ? さぁ、早くしないと、どうなっちゃうのっかなー?』
そこで電話は切れる。そうして、急いでやってきてみれば……。神だなんて……、馬鹿馬鹿しい。俺は宗教は信じねぇんだ。ふざけんじゃねぇぇえぇえぇえぇええええ。
竜輝の目の前に座る男は、呆れたように溜息をつくが、竜輝の顔を見てニヤリと笑った。
「なんなら、神っぽいことでもやってみようか」
対する竜輝は自棄で、挑発的に答える。
「ああ、やれるモンならやってみな」
と。男の方はいよいよ乗り気で、
「ああ、やるさ。俺は“神”だからな。ところで、何すれば神って認めんの?」
と、竜輝に聞く。竜輝は悩んだ仕草をすると、口の端を吊り上げて言う。
「雷だ。」
「あそこにぶっ立ってる電波等に、馬鹿でけぇ雷落としたら、神って認めてやる。」
「 OK 」
竜輝の無茶苦茶な願いに答えようとする男は、地面を人差し指で2回叩く。男意外の2人は不思議に思ったが、黙ってそれを見ていた。男はスッと立ち上がると、天を指差し呟いた。
「 Sander 」
と。
突如、辺りにこれでもか、というほどに大きな、耳を劈くような雷鳴が轟く。
ズドォォォォォォオオオオォォォォォオオオオォォオオン!!!!!!
竜輝と紅浬は、反射的に耳を塞ぐが、男はなんでもないように笑っている。
竜輝は驚き、先ほど指名した電波塔に目を向ける。
電波等の外側を、バチバチと青白いような色をした電気が走る。
市街の方は、一気に停電し、ありとあらゆるところから電気が消えて、まるで闇だ。
「おいおい……、本気かよ……」
竜輝は冷や汗をかきながら、誰に言うでもなく呟いた。
男はそれに答える。
「ああ、本気さ。俺は嘘だけはつかないんでねぇ。」
そうクツクツと笑うと、
「 Return 」
と、再び天を指差したかと思いきや、それを一気に振り下ろした。
すると、市街は再度、光に満ちる。
男は、腰をぬかしている竜輝を見下ろすと、にこやかに笑う。
「お気に召してくれたかい? お前のリクエストだぞ。……これで分かっただろう、俺は神だ。」
竜輝は、笑ったような声を出す。が、決して笑ってはいない。笑う気さえ起きなかった。
「……はは、ありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえありえねえ」
自己暗示をかけ続ける竜輝を見つめながら、男は笑う。
「違うことだって出来るぞー。A heavy rain 」
先ほど、雷を落とすときと同じ動作で、男は呟いた。すると、ポツリポツリと、雨が降り始めたようだ。川に水紋が作られる。
しっとりと降っていた雨が、段々水量を増していき———……。
やがては、大雨に。
ザアザアと止みそうもない雨をBGMとして、男は話しはじめる。
「とりあえず自己紹介といきましょうか。俺の名前はセーファス。お前らは……、寺井竜輝と……臼杵紅浬———、だな。」
1つに束ねてある、男にしては長い、肩まで伸びた銀髪を、雨の混じった風になびかせ、男は言う。今まで、ちゃんと顔を見ていなかったが、かなり美形。黒いスーツにはシワ1つなく、スーツのボタンも、1つ1つ金色に輝いていた。
男のクセに睫なげぇし、美形だし、長身だし……オイオイ、神ってのは本当優れてんだな。ふざけんなあああああ。
竜輝は心の中で、悶絶した。
雨は降り続いている。ザアザアと、止むことさえなく。