コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: トラブルメ−カ−!! ( No.3 )
- 日時: 2012/08/07 09:02
- 名前: 柊 (ID: pzCc2yto)
【1.空を飛ぶ】
今までに、こんな恐怖など味わったことなんてなかった。
いつからだろう。
自宅に帰るまで、男か女かも分からない人間にストーカーされる。
自宅に戻ったって、そいつがまだ何処かにいて見ている、という可能性が無くなるわけではないのだから安心できない。
こんな事が毎日続く。そいつは飽きもせず。何が目的なのか、私に何か恨みでもあるのか。
どうにかしないと、と心では思っても、両親・兄に相談できない。
迷惑をかけてしまう。
心配させてしまう。
警察に被害届を出そうかと思ったものの、証拠が何もない。
そいつの正体を確かめてやろうか——と思ったが結局、怖くて何も出来ない。
心はすでにボロボロだ。
こうなったら、いっそ———
———死んでやろうか。
(1)
「———お、おいッ!!」
息を切らしながら階段を駆け上がる。
俺の何段先を、俺と同じく階段を駆け上がる男子生徒は振り向かないまま階段を駆け上がる。
俺は、その男子生徒———桐谷 紘一の背中に叫び続ける。
「屋上に行ってどうする気だ!」
そう、俺と紘一は屋上への階段を上っている。しかも教師に無断で。
この学校、成城南高校は自殺防止のために屋上を開放しない。
特別なときだけしか、屋上に入ることを許されていないのである。
それも教師同伴である。
しかし、今日だけは違った。
紘一は何の迷いもなく、屋上への階段の扉(普段は鍵をかけている)を
開けたのである。
何故、開いていたのか。
気になる所ではあるが、今はそれどころではない。
紘一が、自殺するかもしれない——!
一瞬、俺の頭にあることが浮かんだ。
もしかしたら、紘一は他のクラスの奴に「めんどくせぇ奴!」と言われて根に持っている可能性がある。
——純粋だからな!
確かにめんどくさい奴だ。
だからって、すでに分かっていることを口に出さなくてもいいじゃないか!
面倒なのは、そのあとなんだよ!クソ野郎が!
あいつは、言われたことをすぐに真に受ける。
やばい、やばい————!
バアァァァァァァン!!
屋上の扉が開かれる。
紘一の足は止まらない。
「おい!早まるんじゃない紘一〜〜!逃げちゃだめだ!」
——ッて、俺は、崖の端に立つ犯人に叫ぶ刑事か!
見たことあるぞこのシーン!!
と、行き止まりのところで紘一は止まった。
今の言葉が通じたのか通じたんだな!
「紘一〜〜〜〜〜〜ッ!」
俺は両手でバンザイの状態にしながら、紘一のいるところにダッシュして、紘一が振り向いたところをハグ———————
「ねぇ、この高さだったら人間でも飛べるよね?」
…………………ん?あれ?今のは空耳……?
屋上から「落ちる」じゃなくて、「飛ぶ」の?———まあ今は、どうでもいい。
俺の目の前に立つ紘一は、満面の笑みである。
おい、その笑みやめろ。
男の俺でも惚れるわ。
どうやら、後者のほうだったらしい。安心した。
「お前、『めんどくせぇ奴』って言われてショックを受けたんじゃなかったのか?」
「そんなこと言われた?俺」
能天気—————————っ!!
「俺の心配は無駄だったのか!」
体力消耗だ、バカ。で、紘一はさっき何か妙なこと言ってたな。
何だっけ?
紘一は、いつのまにか屋上から下をのぞいていた。
「でさ、本題に戻すけど、これぐらいの高さだったら飛べるよね!」
「あああ!思い出した!」これだ!誰だ、こいつに変な事を教えたのは!
「まだ言うか!無理だそんなの!お前が飛べるんだったらライト兄弟も飛行機開発せずに飛んどるわ!そんなことやるの現代でお前だけだ!」
吹奏楽部員の腹式呼吸並みに、俺は大声でまくし立てた。
ああ俺、吹奏楽から勧誘くるかもな………