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Re: トラブルメ−カ−!! ( No.7 )
日時: 2012/08/10 13:07
名前: 柊 (ID: pzCc2yto)

【1.空を飛ぶ】 

(2)

「春臣君……唾がとんでるよ」

「うるさい!」

何故か紘一のさばさばした顔に腹が立つ。

「俺だけじゃないよ」

「は?」

意味が分からない。

「俺以外にも、飛ぼうとしている人がいるんだよ。ほら」

紘一は頭を別の方向に向けた。俺も紘一につられて頭を動かす。
確かに、紘一みたいに飛ぼうとしている変人の女子生徒がいた。
どこから持ち出したのか、椅子の上に立って、今にも飛び立とうとしている。

「おい!やめ————」

俺は女子生徒に叫んだところで、紘一とは何かが違うことに気付いた。
女子生徒はスリッパを脱いで椅子の下に置いていた。

あれじゃあ、まるで————

「春臣君!彼女を保護するよ!」

めったに叫ばない紘一の声を聞いて、俺は女子生徒のもとへ駆け寄った。傍には、紘一もいる。

「おいッ!!聞こえないのか!やめろって!」

女子生徒の体が一瞬だけ、ビクッと動いた。

「彼女、放心状態かもしれない!」

「やばい!倒れる!」

女子生徒の体は、もうすでに傾いていた。
必死に両手を伸ばした。
時の流れが遅く感じる——————



  * * *

「い、だァ〜〜〜〜ッ!!」

俺の叫び声が辺りに響いた。
俺の体が動かない。お、重い………。腰がやられた………

俺は、ふーふー言いながら後ろを向いた。
俺の上に紘一が座っていて、紘一が女子生徒を両手で受け止めていた。
いわゆるお姫様だっこだ。
ああ、間に合ったんだ。

 ……………

「いつまで俺の上に乗ってんだ!降りろ〜!」

俺は紘一ごと振り落とす。
紘一は女子生徒を抱えたまま、ゴロン、ゴロンと転がって止まった。
紘一は女子生徒から離れて起き上った。

「春臣君の上に乗るのって気持ちいいね」

………うれしくない。褒め言葉じゃない!せめて、

「助かった、とか礼を言わんか!」

「ありがとうね」

助かったよ、と笑って言うと、紘一は女子生徒を抱えて歩きだした。

「保健室行ってくるよ」

「お、おう………」

紘一の姿が見えなくなると、俺は仰向けになって大の字になった。


————紘一、変ったよなぁ……人見知りだったのに