コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 1 依頼 ( No.1 )
- 日時: 2012/08/22 15:07
- 名前: 零華 (ID: BwWmaw9W)
「行くしかないか……なぁ、相棒」
隣に立つ人物に話掛けられる。時は九月。まだ厳しい暑さが残っている。
その暑さのせいか、はたまた隣にいる人物のせいか、アズマは顔をしかめた。
「だから相棒はやめろ、俺の名前はアズマだ……って何回俺がお前に言ったと思う?」
相棒は指を数える仕草をして静かに笑った。
「数えきれないくらい。かな?」
そんなに言った憶えはない……はず。考えていると、ハルが真面目な顔でこっちを向いた。
「死ぬなよ。俺たちは生きて帰る」
「お前もな、とか言っとく?」
「……いらない」
そろそろ行くか。
拳を合わせ、二人は戦場へ赴いた。
「ここは研究施設だな」
ここが研究施設だという事は多分間違いない。依頼の内容からしてそうだろう。しかし、内部がほとんど破壊されていて、目も当てられないような状況だ。いたるところに設置されている警報装置が鳴り響き、赤いランプはちらちらと妖しい光を投げかけている。
「ひどい有り様だ」
「ああ、奴は居ないようだ、先へ行こう」
奴とは、戦闘用AI ゛B71W 死始゛の事だ。
「まったく、酷い依頼を引き受けちまったもんだ」
「…………この依頼お前が引き受けたんだろ。はぁ……俺は反対したのに」
そもそも事の始まりは、アズマが怪しい依頼を請けたことからだった。
「なあハル、良い依頼があったぜ」
ギルド内の掲示板前にハルを呼び寄せる。
「ほら、討伐依頼だ」
討伐依頼 機械系 戦闘経験ありの人のみ ランクD
「いくらなんでも最高ランクはなあ……疲れるし」
ハルはあまり乗り気ではない。
「やるだけやってみようぜ」
「まあ依頼内容聞くだけなら」
しかし二人は気づいていなかった。この言葉に。
※ノーリターン 依頼内容を聞いたら引き返せません。
- Re: Link! ( No.2 )
- 日時: 2012/08/09 15:15
- 名前: みゅうみゅう (ID: jTmVOfr9)
はじめまして!みゅうみゅうです^^
おもしろいですね!
ギルド・・・・・・かっこいい!!
あたしのもよろしければ読んでみてほしいです・・・・・・
更新がんばってください^^
- Re: Link! ( No.3 )
- 日時: 2012/08/09 15:18
- 名前: 零華 (ID: BwWmaw9W)
ありがとうございます。
まだまだ初心者ですががんばります!
- 1 依頼 ( No.4 )
- 日時: 2012/08/23 09:05
- 名前: 零華 (ID: BwWmaw9W)
「なあ、どうせ来たんだから依頼請けようぜ」
「依頼を聞くだけってさっきもいった」
依頼人の家に着くまでこの論争が続いている。
「えー」
ブーイングでもしてきそうな勢いのアズマにハルが決着を着けようと仕掛ける。
「アズマの理論はせっかく来たのに勿体無いっていうモノだろ、依頼は内容次第で請けるか請けないか決めるもんだ、依頼を聞きに来て、此処まで来た手間が勿体無いから依頼を請けるっていうのは本末転倒だろ」
狙い通りアズマが黙る。勝者はハルだった。
「ハイ、決定。依頼を聞くだけな」
だいたいアズマの魂胆は見えすいている。最近Dランクの依頼を請けていない(と言っても一ヶ月位だけ)から腕試し、とか考えているのが明白だ。
「まあ、方針も決まった事だし中行こうか」
ハルが少し笑いながら提案し、アズマが仏頂面でそれに続く。
依頼人の屋敷は、屋敷と言うより邸宅と言った方がしっくりくる。一目見て金持ちだな、と分かる家だ。
「何かこういう所って敷居が高いな……」
そう言いながらもちゃっかり中へ入る。
どんな金持ちが住んでんだか……
二人でコソコソ話ながら、扉をノックする。
インターフォンは無かった。
「うぉっと……」
アズマが飛び退く、扉が外開きだった、ハルは扉の開く範囲に居なかったので涼しい顔だ。
中から出てきたのは黒服の使用人らしき男だった。
「ご用件、は、何です、か」
妙に言葉が途切れている。まるでロボットだ。
「あの、何処か他の国の方ですか?」
聞いたハルに返ってきた答えがこれだ。
「いえ、ここ、の、国のひと、です」
アズマが怪訝な顔で、
「何で言葉が途切れてんの?」
と、質問する。
「そんな、ことは無い!!、です」
「はぁ……?」
「ご用件、は、何です、か」
「依頼主に会いたいんだが」
「かしこまり、まし、た、私について、来て、下さい」
使用人が律動的な歩調で進む。
「凄く洗練された使用人なんだね」
「こんな使用人をアルバイト感覚で雇うから金持ちって言うのは……」
「しょうがない、それが金持ちの性なんだから」
アズマもハルも依頼人に聞こえないからと言って好き勝手言う。
「……おっと」
喋っていると、二人で急に止まった使用人にぶつかりそうになった。
使用人がこっちを向く。何かが変だ、妙に無表情。
「………」
「どうしましたか?」
使用人は口を開かない。
「…………」
「あのー」
カパッ! 謎の機械音とともに、使用人の口が開いた。
「なぁ、使用人の口ん中光ってないか?」
ハルにそう指摘されアズマもよく見てみる。
使用人の口に広がる——光。
これって、まさか……
考えるよりも直観が先だった。
「伏せろ!」
叫びながら自分も伏せる。しかしその間も目はしっかり開けたままだった。
使用人の口から蒼白い光線が発射された。光線は見事に二人がさっきまでいた場所を貫ぬいている。後一瞬遅れていたら——考えるだけで恐ろしい。
「ふぅ……ハルも無事だな」
「ああ」
一息入れようかと思った時、
また使用人の口が光始めた。それは何故か。
答えは一つしかない。
「おい!あいつどうするっ!」
ハルが声を張り上げる。
「ニ度目があると思うな!」
アズマが走り出した。
「まて……それなら俺が、」
しかしアズマは聞いてはいなかった。
使用人の顔を問答無用で殴りつける。が、使用人は吹っ飛ぶどころか顔の向きさえ変えない。しかも殴った反動で体勢を崩した。
「こいつ……ハル!金属だ!」
と、使用人もどきがゆっくりとアズマの方を向く。やばい。奴はまだレーザーを撃つ体勢だ……
もはや終わりかと思ったその時、
とてつもない爆発音と共に、使用人が炎上する。一瞬の出来事だった。
そしてその爆風に巻き込まれて吹っ飛ぶ。
「くっ……いって……」
どうやら死だけは免れたようだ。
「アズマ!大丈夫か!」
大丈夫もなにも、
「ハル!お前のせいで俺は死ぬかと思ったぞ!」
恐らくあの爆発はハルが起こしたものだろう。周りは爆風で吹き飛んだ壁やら天井やら。すごいことになっている。
「ああ、ごめんごめん」
「普通あんな至近距離でしかも回りに仲間がいるのに火を放つか!?」
火に巻き込まれなくても爆風で吹っ飛ばされて死にかねない。
「だってあいつ怯ませないとレーザー撃つの止めるか分からないからなぁ」
二人で口喧嘩していると、
「争っている時間はなさそうだ……使用人たちのお出ましだ」
散乱した瓦礫の向こうに10人ほどの使用人が立っている。
その口は——蒼白い。
「コイツらはロボだ。遠慮はいらない」
そう口にするアズマの手に稲妻が閃く。
「邪魔するな。雑魚が」
「ふぅ……」
使用人ロボは、一体残らずに消えた。
文字通り、パーツの1つすら残っていない。アズマなど、さっきの恨みとばかりに、魔法を使って雷を撃ちまくっていた。まるで悪魔だ。
「さあ行こう」
更に散乱した瓦礫を掻き分け、前へ前へと進んでいると、
「何だこりゃ?」
瓦礫の中に、一ヶ所だけ床がすっぽぬけている。
どうやら地下へと続く階段だ。
「行く?」
ハルが窺う。
「行くに決まってるだろ」
アズマがニヤリと笑う。
ギルドでも一位二位を争う冒険好きだ。
聞くまでも無かったな。ハルが笑った。
地下への階段は意外と長く、中が暗いのでハルの出した炎を頼りに進む。
「下に何があると思う」
「定石なら地下牢があって中には死体がゴッソリ……なんて」
そんなことを言って笑っていれたのは地下室に着くまでだった。
扉を見つけて開く。中を早くみようと先にアズマが、その後ろにハルが続く。
と、急にアズマが立ち止まり、ハルが背中に激突した。
「ちょっと…急に止まんないでくれるかな?」
そう言いつつ中を覗いたハルが固まる。
薄暗い地下室には、牢屋、そして死体が累々。
「はは……マジか」
「これは、まさかさっきの使用人に始末された人たちか?」
「かもな」
牢屋の中には死体がかなりの数ある。
「あれって警察手帳じゃないか?」
コンクリートの床に落ちている縦開きの手帳。それは明らかに警察手帳だった。
「どうするよ、これ」
「俺たちは警察じゃないし正義の味方でもない」
「と、いうと?」
「見なかったふりで良いだろ、こういうのに関わるとロクなことにならない。依頼も無くなっちまうしな」
と言って踵を返す。
まあ敵でもないし依頼を達成して報酬もらったら通報でもしてやるか。
誰に聞かせるわけでもなく呟いたアズマに、ハルが、
「まだ請けるとはいってない。聞くだけね」
と言ってまた階段を登り始めた。
- 1 依頼 ( No.5 )
- 日時: 2012/08/23 09:11
- 名前: 零華 (ID: BwWmaw9W)
「ここか?」
たどり着いた部屋のドアを開けると、中には依頼主らしき人物が座っている。
「どうやら……」」
ハルが続ける。
「やっと着いたみたいだね」
「おや……ここにこれたということは、H21試作機を倒してきたのか」
H21試作機……
「さっきの使用人もどきのことか」
使用人もどきと言う言葉に依頼主の表情が硬くなる。
「あれは、使用人もどきなどではない。ヒューマノイド、人型のAIの試作機だ」
これで使用人のおかしな喋り方の謎が解けた。
「私はニコだ。ニコ・アルベルト。それにしても、さっきの爆発はお前らだろう、良くあんな瞬時あれに対応出来たな」
「誉め言葉として受け取っておく」
あの火は、ハルが魔法を使ったんだろう。
さて……
「何であんなものを……」
一番疑問に思っていた事を聞いてみた。
「家に置いておくかって?普段もあんな物を作動させておくと思うか?あれは歓迎用だ」
「歓迎って……あんたまさか、」
「君たちが門をくぐったのに気づいて起動した。あれくらい破壊できないなら私の作った 〝B71W 死始″を破壊することは出来ない。」
「は?」
「今回の依頼は、」
俺たちまだ依頼は受けるとはいっていないはずだ、おかしく思っていると、ニコがまた、二人はもう依頼を受けることが決まっているかのような口調で話し始めた。
「私が作ったAI、B71W 死始を破壊するというものだ。死始はライオンのような姿をしている」
「だから……」
「依頼内容に書いてあったはずだ、引き返すことはできないと」
……見落としてた。ハルの方を向くと、案の定
『依頼聞くだけだよねぇ……アズマ』
ハルの冷たい視線がそう言っていることを物語っている。
あーあ、やっちまった。
「B71W 死始は、何故か誤差動を起こした。我が研究私設で暴れている。それを破壊してほしい。報酬は……50000Jでどうだろう」
50000J……アズマとハル二人で分けてもかなりの額だ。報酬だけみるとかなりいい依頼だろう。その分危険も隣り合わせになるだろうが。第一二人はノーリターン、戻ることは出来ない。
「場所は」
「北の森の真ん中あたりだ」
北の森は入ったら出られないと有名な樹海だ。名前こそ森だが、規模が違う。
「わかった。それじゃあ」
依頼内容を聞いたらさっさと踵を返す。
「ちっ、何がノーリターンだ……」
- Re: Link! コメ返します! ( No.6 )
- 日時: 2012/08/10 16:44
- 名前: ソウル (ID: .uCwXdh9)
こんにちは!
コメありがとうございます!
読みに来ましたよ^^
魔導師ギルドの話ですか。俺こういうの大好きなんです!
戦闘シーンがあり、シリアスな描写になりやすいのに、アズマとハルの会話等で読みやすく面白かったです!
続きが気になります。これは……常連になっちゃいますね。
更新頑張ってください!
- Re: Link! コメ返します! ( No.7 )
- 日時: 2012/08/15 12:35
- 名前: バチカ (ID: LuHX0g2z)
小説図書館から飛んできました^^
戦闘物はあまり読んだことがないのでわからないことも多いですが使用人もどきがいきなり襲ってきたところからの戦闘シーン、想像の範囲が広かったっす!
面白そうな作品ですね^^
- Re: Link! コメ返します! ( No.8 )
- 日時: 2012/08/15 15:14
- 名前: 志帆 ◆wa2f.aihh2 (ID: fQl/VR.0)
初めまして!
科学と魔法が発達した世界が面白そうだなと思い読ませていただきました^^
とても面白いです。コメディでは珍しい戦闘シーンが光って見えました。
魔導士とはいかなる者かギルドの仕組みなんかが気になります!
応援しています、執筆頑張ってください!
- Re: Link! コメ返します! ( No.9 )
- 日時: 2012/08/22 15:25
- 名前: 麗華 (ID: BwWmaw9W)
コメントありがとうございます!
旅行先から執筆しているのでコメが遅れると思いますがすいません
二人で話し合った結果、依頼に行くのは明日になった。そのまま二人で寮に帰る。
ギルド加入者はほとんど寮生活である。その方が家賃節約になるし、すぐギルドに行くことができる。ちなみに寮の部屋は二人部屋で、アズマとハルも同じ部屋にぶちこまれている。
自分達の部屋に入って一段落すると、依頼の話になった。
「まず依頼にどれぐらいの時間がかかるか分かんないから明日の朝から出発した方がいいだろうな……」
「何か持ってく?」
「相手は戦争用の機械だ。並みの破壊力じゃ壊せない。対戦車ミサイル位じゃ消えないかもな」
対戦車ミサイル撃って破壊されない機械というのもどうかとおもうが、今日の使用人AIを見た後ではそんな考えにならざるを得ない。
まあ機械に効くものだな……
「まあ相手はAIとはいえだだの機械だ。なんとかなるだろう」
しかし、実際にはなんとかならなかったのである。
次の日、アズマとハルはギルドの前に立っていた。これから空間輸送魔法で研究施設まで移動するのである。空間移動魔法はかなり上位の魔法だが、二人ともいまでは難なく使いこなせる。
ちなみに二人の魔法は、
アズマは雷の魔法に、Linkと呼ばれる特殊能力、さらに魔力を操る能力を使える。
Linkとは: 物体吸収魔法 物体を一時的に体内に取り込むことで物体に応じた特殊能力が使用可能になる魔法
ハルは炎の魔法と風の魔法、後異空間に物体を保存しておける魔法の三種類が使える。
「よし、行こうか」
二人で研究施設にワープした。
一瞬のうちに二人は研究施設の前に着いた。
そして今に至る。
- Re: Link! コメ返します! ( No.10 )
- 日時: 2012/08/23 09:09
- 名前: 麗華 (ID: BwWmaw9W)
「奴は居ないようだ。先へ行こう。」
死始は何処に居るのか…気づいたら後ろにいたなんてオチは絶対に避けたい。そんなことになれば死にかねない。いや、即死だろう。
中はかなり暗い。窓はあるけれど、回りが森ということで、極端に光が少ない。そのせいか、かなり不気味だ。
一つ二つと扉を潜る毎に、暗くなっていくのが分かる。どうやら最深部に近づいてきたようだ。
死始は何処に…
時間がたち、少し焦り始めた頃に、二人は一際大きな扉を見つけた。
「入ってみようか…」
扉を開けると、軋む音がする。
中はドームのようになっている。上に天井が無いせいか比較的明るい。
そして
「あれは…」
奥にある暗闇の中に赤い光が蠢いている。それはまるでルビーのように煌めき、毒々しい光を放つ。
「………奴だ」
B71W 死始が姿を現した。本物の獅子とは似てもつかない金属質の体。吸い込まれてしまいそうな漆黒の色彩。人間の二倍位の背丈がある。更には両脇に機関銃、開いた口にはレーザー銃だ。
「グオォォォォッッ!!」
死始が雄叫びを上げる。
「来るぞ!!」
恐ろしい跳躍力で、強烈なタックルをかまして来た。
それをヒラリと回避し、至近距離で雷を放つ。
しっかりヒットしたはずだが、死始にダメージがあるようには見えない。
「金属だからか…?」
また激しいタックルをかわすと、後に出来た隙にハルが炎を放つ。
これは避けられた。
やはり死始の機動力が高い。人間とは比べ物にならない程。
「それならあれだ、地雷埋めよう」
ハルが物騒な物を数個、空間魔法で取り出してセットした。
これなら効果があるだろう、なにしろ対戦車地雷だからな。
しかし、ダメージとか依然の問題だった。
死始が地雷に足を載せた瞬間、地雷が爆発した。
だが。
死始には当たっていなかった。
爆発した直後、バックステップでかわされていた。
戦争用AIだと言っていたが—
まさか地雷を避けられるなんて。
反則だろ…ハルが呟く声が聞こえた。
確かにあのスピードは反則級だ。
「せっかくの地雷を無駄に出来るかッ!一個何円すると思ってんだ!!」
ハルが強風を巻き起こし、セットしてあった地雷全てが死始に向かって襲いかかった。
いけるか—死始は避けない。
「いける!」
地雷が空中で爆発した。
死始の後部ハッチが開き、ミサイルが発射されていた。そのミサイルに撃ち落とされたのだ。
「…マジで反則」
「これは一筋縄では行かないな」
ハルがもう一度と火を放つが直前でまたもかわさる。
そのとき タタタタタッと、軽い発砲音と共に、両脇に装備されている機関銃の掃射が開始された。
「くっ……」
ハルが風を起こし、銃弾を弾き飛ばす。
あの機関銃をどうにかしないとな…
「ハル!お前あの機関銃溶かすぐらい出来るよな!?」
「出来るけど炎が当たらない!」
「それは俺がどうにかする」
「分かった!」
どうするか分からないが、今はアズマを信じるしかない。
「行くぞ!」
アズマはポケットから得意気に磁石を取り出した。
「Link」
磁石が手の平に吸い込まれてゆく。
「今 我に操られし物よ 万有の力 解き放て 」
アズマの下に魔方陣が現れた。
これで磁力を操れる、と呟いて、呪文を詠唱する。
「惹き付け合う力よ 今その力解放せん! 」
今度は死始の下に紫色の魔方陣が出来る。
死始が磁力で動かなくなった。
「ハル!行け!」
「アシストありがとよ!」
早くやって来れこっちはそろそろ限界だ…これ以上奴を押さえておけない。
「燃えろっ!!」
ハルが放った炎は—当たった。
両脇の機関銃が燃えて…溶け始めた。
——いけるか、このまま死始を溶かせるか。
「無理か」
やはり一筋縄では行かない相手だ。
しかも、同時に磁力が効かなくなってきた。「ガァァァッッッ!!!!」
その雄叫びは悲鳴であり怒りの咆哮だった。死始の口が大きく開いた。
「チャージ開始」
口が蒼白く光る。しかし、使用人の時とは明確な違いが合った。
魔方陣がある。魔方陣は普通魔力を持っている者しか作り出せないはずだ。
それなのに何故……
考えている暇は無かった。
「チャージ完了…」
死始の口から蒼白い弾が打ち出された。それは明らかにアズマを狙っている。
ダメだ、速い。どうする…こうする。
「……魔力解放」
「アズマ!やめろ…」
出来ればこれは使いたくなかった。体中の魔力が手に集まって来るのを感じながら、しっかりと死始を見据える。
死んでたまるかッ!
「魔力放出!!!」
集まった魔力は、紅い球体となって死始に向かう。
その途中、蒼白い弾を打ち消し、開いていた死始の口に入った。
爆発、
そして沈黙。
「終わった…な」
回りには、そこらじゅうに死始のパーツが散らばっている。
「あぁ…もう一歩も動けない…」
アズマはと言えば魔力を使いきって無気力状態である。
「破壊した証拠っと」
ハルが一番大きなパーツを拾い上げ、空間魔法で異次元にしまいこんだ。
「さぁ、帰ろう」
「もう歩けん…」
「おい…だから使うなって言ったのにな」
アズマが渋々の体で歩き始めた。
二人は大きな扉をくぐり抜け、闇の中に入っていった。
そして。
「…………しまった迷った」