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Re: 超高性能アンドロイド、拾いました ( No.42 )
日時: 2012/11/14 20:28
名前: カルマ (ID: 4pBYKdI8)

22 見てみましょう

「全員集まれ!出席をとる!」
「「「はい!」」」
「男子は...全員いるね」
先日、yuriaの部活の話をした際にバド部に見学に来るか?という話をした。yuriaはその言葉に面白そうです、とうなずき、せっかくなので俺たちも見学することにしたのだ。
「は〜、これが部活かぁ」
アリアが感嘆の声を上げた。女子はざっと30人。対して男子は7人しかいない。
「休みは4人、か。今日は見学に来ている人もいるが、集中して練習するように。以上。」
「すっげー、すっげーよ、京介!雷華が部長っぽい!!」
「いや、そりゃ部長なんだろ、一応」
『あのラケットで羽根を打つんですね。なるほど』
俺たちが思い思いの感想をつぶやく中、練習は再開される。
「走るから並んで!」
「タイマーかけるぞー。」
ビーッという音とともに、部員たちはいっせいに走り出す。

「なぁ、お前ら入部すんのかー?」
ランニングや基礎打ちと呼ばれるものが終わったあと。休憩をしていたらしい男子が声をかけてきた。
「いや、入部考えてんのはこいつだけ」
俺がyuriaを指差すと、少年は少し残念そうな顔をした。
「そっかー、ずりぃよ、女子だけ〜。男子7人しかいないんだぜ?女子なんてその4倍以上いるし、男子は肩身せまいんだって。なぁ、お前らも入部してくれよ」
少年は拗ねたように言った。
「いや、俺は遠慮しとくよ」
「んー、俺もルールにとらわれる競技は向かないんだよな」
『ルールにとらわれない競技って一体なんですか』
yuriaのツッコミは適切である。
「勇人、ノックするからコート入って」
「琴羽!なぁ、うち男子少なすぎだろ!もっと勧誘しようぜ!?」
勇人、と呼ばれた少年は部長らしく声をかけてきた琴羽にわめいた。
「べつにいいんじゃない?人数少なくたって、楽しいし。それに女子が多すぎるんだと思うけど」
「そうなんだけどさー」
もごもごと口を動かす勇人に苦笑しながら
「でも、京介と翔も入りたいと思ったら言ってね。いつでも大歓迎だよ。ほら、行こう勇人。亮太達待ってるよ」
「わかった。じゃーな」

琴羽と勇人と入れ替わるように、今度は茶髪の少女が声をかけてきた。
「雷華先輩のお友達なんですよね?」
一年生らしい彼女は、練習のせいでほんのりと顔が赤い。
「うん、そうだよ〜」
「一年のときからだけどな」
「あの、普段の雷華先輩って、どんな感じなんですか!?」
急にずいっと顔を近づけてきた少女から、少し後ずさる。
「あ、それ私も気になる!」
その後ろからすごい勢いで数名の少女がかけてくる。その後ろからさらに、呆れたような顔をした少女...一年のときに同じクラスだった、副部長の池上飛鳥が歩いてきた。
「こら、お前たちは筋トレ終わってないだろ。聞きたいことがあるなら腹筋60回終わってからにしな」
「先輩〜、私たち部活のときの雷華先輩しかしらないんですよ!?」
「それがどうしたのさ」
「もっと雷華先輩のこと知りたいじゃないですか!」
「...普通そこは琴羽のことだと思うが、そうじゃないあたりから雷華のカリスマ性というか...人気がわかるな」
はぁ、と池上はため息をついた。
「悪いな。こいつらもはや雷華信者と言ってもいいくらいだから。テキトーになんか話してやってくれ。じゃ。お前たちは満足したら筋トレしなよ〜」
「「「「は〜い」」」」

雷華信者だという少女たちに適当な昔話をして、少しばかり練習にも参加したりする。雷華&琴羽のペアと俺とyuriaでダブルスの試合をさせられたときは泣きそうになった。さすがアンドロイドのyuriaは、なかなかの羽裁きで二人の打つ球を打っていた。そのせいで二人には何かのスイッチが入ってしまったようで。
「ふふ、打たれっぱなしでは格好がつかないな、琴羽」
「だね。...そろそろ本気で行こうか」
あきらかな殺気のこもった球を、yuriaは打てたり打てなかったり。そして俺はyuriaの後ろでおろおろしてるだけだったり。

「はぁ〜、楽しかったぞ、yuria!なかなかやるじゃないか」
雷華がすっきりしたような、満面の笑みで言う。その笑顔のまぶしさに黄色い声が上がり、何人かの女子が倒れる。
「本当、すごかったよ。いい練習になった」
琴羽もさわやかな笑顔を浮かべる。こちらには声変わりしかけの男子部員の、よっ、イケメンwwだの、王子ー、こっちむいてーwwだのというふざけた声援が送られていた。うるさいよ、と琴羽が軽くにらみつければ、先ほどの勇人という少年が裏声で
「ごめんなさい...でも、琴羽君に少しでも見てほしくて...」
といって泣きまねをした。その流れから琴羽を含めた男子部員は昼ドラばりにドロドロした茶番をはじめた。
「悪いけど、俺は最初から君の事なんて遊びだったんだ。」
「そんな!」
「もう俺の前に二度と現れないでほしいな。俺...もうすぐ結婚するんだから」
「っ!」
凄い演技だ。なんか迫力がある。そして三人目の加入。
「そこまでだ!...ふふっwww」
どうやら二人を止める役らしいが、笑うが止まらないようだ。
「誰だか知らないがwwwゆうwwちゃんwwwを傷つけるやつはっww許さないwww」
「「ユウちゃんwwww」
楽しそうで何より。いつの間にか皆が笑顔になっていた。



「で、結局入ることにしたのか」
うちに帰るなり、yuriaは入部届けと格闘し始めた。
『はい。楽しそうだったので』
「そっか」
難しく考えすぎてしまうのか、あれやこれやと悩みながら何度も書き直す様を、俺は父親のような気持ちで見つめた。いや、父親じゃないからわかんないけど。
「がんばれよ」
そう声をかけたら、彼女は元気よく頷いた。
しかし、自分の名前すら間違っている入部届けを見れば、彼女のこれからが心配になってしまうのだった。