コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: あの星を探しに。(ラノベ風) ( No.136 )
- 日時: 2012/11/17 23:06
- 名前: リア (ID: CwTdFiZy)
「唯、7時20分だ。出るぞ!」
俺が小声で唯の部屋の前でそう呼びかけると、出掛ける用の服を着た唯が出てきた。
薄黄色がベースの花柄のキュロットズボンに、からし色のリボンが付いた長袖、足元はニーハイという今時らしい格好だった。
靴はパンプスにするそうだ。
「よし、出発だな。携帯と定期、あと財布とカメラ、持ったか?」
「うん、持った。お兄ちゃんこそ持ったの?」
「もちろんだ。よし、行くぞ。母さんに気付かれた一巻の終わりだからな。」
「ラジャ!」
唯が敬礼したのを見て、思わず爆笑しそうになるのを抑え、第一難関の階段に向かうことにした。
俺たちは、慎重に階段を下りるペースを合わせながら降りた。
そうでないと、唯がいることがバレてしまうからだ。
「おし、玄関へ急ぐぞ。」
「うん。」
俺たちはそう言って、目で合図し、一斉に玄関へと向かった。
そして、靴箱へ手を伸ばそうとした次の瞬間、リビングの扉が開いた。
「あ、儷ちゃん?言い忘れてたんだけど・・・」
母さんの話し声と共に、母さんの片方の足が廊下に出た。
俺たち、主に唯の隠れる場所はどこにもない。
どうしようかと焦っていると、急に電話がリビングの方で鳴った。
体をほぼ廊下へ出しかけていた母さんは慌ててUターンをして、リビングの方へと向かった。
「ふー、よかった。唯、今のうちにお前は・・・って、お前だったのか!」
そう、俺が俺の後ろに隠れていた唯に話しかけようと、後ろを向くと唯が携帯を鳴らしている途中だったのだ。
道理でタイミングよく、電話が鳴るものだ。
って、そんなことに納得している場合ではない。
俺は悠々とこの家を出られるが、唯はそんな立場ではない。
先に唯にはこの家を出てもらはないと。
「うん、私が今掛けてる。あ、やば!電話とられた。切らなきゃ!」
そう言って、唯が携帯の電話を切った。
そして俺はそれを確認すると、急かすように俺が言った。
「唯、母さんがまた玄関に戻って来るまでにここを出るんだ。早くパンプスを持て!」
「う、うん!」
唯はそう言いながら、靴箱を慣れた手つきで開け、履いて行きたかったパンプスを1秒も掛からないうちに選び、玄関を出た。
「ふー。」
俺が安堵のあまり思わず溜め息を吐いていると、母さんが玄関へやってきた。
「変ね〜。間違い電話かしら?」
「まぁ、そこらへんは気にしなくていいんじゃね?」
「・・・そうよね。あ、そうそう!さっき言おうと思ってたんだけどね、何か唯の帰りが予定より遅いのよ。もし、駅で合ったら母さんに伝えてくれないかしら?」
「なんだ、そんなことだったのか。分かった。そうするよ。それじゃあ、電車に遅れたらまずいから行ってくる。」
「はい、いってらっしゃい。」
こうして、なんとか俺たちは家を出ることに成功したのであった。