コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: あの星を探しに。(ラノベ風) ( No.141 )
- 日時: 2012/11/21 22:32
- 名前: リア (ID: fhP2fUVm)
「でも、嬉しかった。ありがとう。」
意外だった。
学校の友達の前では性格が良くても、やはり唯にとって”兄”という存在である俺にはいつも憎まれ口を叩いてきた。
なので、こんな嬉しい言葉を期待していなかったのだ。
予想外の言葉に、俺が言葉を発せずにいると、唯が段々と頬を染め、
「馬鹿!何とか反応してよぉ〜!」
と口を尖らせて怒りだした。
俺はそれを見たら、先ほどまでなぜ喋れなかったのかが分からないくらいにペラペラとしゃべりだした。
「なんだよ、今の怒り方!彼氏だって爆笑もんだぞ、それは!」
「ちょ、彼氏ってワードは今、私の前では禁句でしょう!?」
「だって、お前らは別に別れたわけじゃねーんだろ?」
「そ、そうだけどさぁ・・・」
「そんなら大丈夫だ。あ、光見えてきた。電車、来るぞ。」
俺が左の方を見ながら言うと、唯も左の方を見た。
微かに見えていた黄色っぽい灯りが、段々と近づいてきて、ついにホームにアナウンスが入った。
『間もなく、2番線に電車が参ります。危険ですから、黄色い線の内側でお待ちください。』
「だって、お兄ちゃん。」
「お前に言われたくねーな。俺は毎日電車で通ってるんだぞ?」
「あ、そーだっけ?忘れてた!」
「はぁ・・・」
俺がそう溜め息を吐くのとほぼ同時に電車が到着し、扉が開いた。
電車からは仕事帰りのサラリーマンや部活帰りの中学生らしき若者たちが一斉に降りてきた。
俺たちはそれを器用に避けながら、ついに電車に乗り込んだ。
「おー、電車だ!」
「唯のテンション、上がってるな。」
「だって、私はお兄ちゃんと違って滅多に電車、乗れないんだよ?だから、テンション上がるに決まってんじゃん!」
「そうか。」
俺は適当に相槌を打ち、まだ目をキラキラさせながら電車の扉に張り付いている唯を放って、電車の中を見渡した。
人を探しているのだ。
一体誰を探しているのかと言うと・・・
「よぉ、儷!今日は面白い情報を・・・って、隣に居る可愛い女の子は一体誰!?もしや彼女か?お前、彼女いないって言ってたくせに・・・。くそっ!抜け駆けか!」
「落ち着けって、凛。こいつは彼女でも何でもない。俺の妹の唯だ。」
そう、俺が探していたのは凛だった。
いつもこの電車で待ち合わせしているのだ。
「どうも、こんにちは!」
唯が満面の笑みを浮かべながら、凛に挨拶する。
凛はその笑顔に理性がぶっ飛びそうになりながらも、なんとか堪えたようだ。
「まさか、儷の妹さんに会えるとはね〜!唯ちゃんだっけ?俺のコト、お兄ちゃんから聞いてる?」
「・・・ごめんなさい、何も聞いてないです。」
「おい、儷!てめぇ、何でおれの存在をこんな可愛い子に教えねぇんだよ!」
「いやいやいや、今、家庭事情が事情なんでね。」
俺が慌てて両手を左右に振りながら、そう言って否定した途端、急に唯の顔が暗くなった。
今の俺の言葉で母さんのことを思い出してしまったんだろう。
「すまん。無神経なこと言ったな。」
「ううん、いいの。お兄ちゃんの所為じゃないから。」
俺たち兄弟はそう言ったきり、黙り込んでしまった。