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Re: あの星を探しに。(ラノベ風) ( No.195 )
日時: 2013/04/29 14:23
名前: 華憐 (ID: exZtdiuL)

俺たちは二人が南の家へと入って行くのを見送ってから、無線機のスイッチをONにした。

そう、西条の鞄に盗聴器をしかけたのだ。


『こちら西条。聞き取れますか?』

無線機を所持している神谷先輩が応答する。

「神谷だ。ちゃんと聞こえている。危なくなったら”君の瞳に乾杯”と唱えろ。それでは健闘を祈る」

『はい』


・・・西条、君は本当に偉い。

神谷先輩の言葉のセンスのなさに、吹き出さなかったのが偉い。

もう、部員全員が肩を震わせてるよ。勿論、俺もその一人だ。

あ、でも・・・斉藤先輩は別だっけ?


「もう、美紀ちゃーん!”君の瞳に乾杯”って最高じゃないですか!そんなの誰も思いつきませんよ!やはり、私の美紀ちゃんですね!」

「それはありがとう。でも・・・」

「でも、何ですか?」

「正直言って、恥ずかしかった」


・・・部員全員フリーズ状態。

あの、神谷先輩?

一体何とおっしゃったのでしょうか?

恥ずかしい?

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・自覚あったんかい!!!

なのにそれを言ったのか!?

それを言ってしまったのか!?

とんでもない勇気だな!

ここは一応シリアスな場面のはずなんだが?

ふざけてる場合ではないのだが?

本当、何言ってんだよ。

部員全員が呆れたムードに入っていると、無線機から会話が聞こえてきた。


『あら、あんた。今日も生きてたの?帰ってこなくてよかったのに』


・・・酷い言い様だな。

暴力じゃなくても言葉の暴力ってやつだな。

あ、でも南の体には痣があったから、どちらも受けてるということか。

本当、南は強いな。


『うん』

『分かってるんだったら出てってくれない?あんたなんかあたしの子供じゃないわ』

『うん。そうだね。でも、今日は会わせたい人がいるの』

『会わせたい人?誰よそれ?まさか彼氏とか?っは。いい度胸してるわねあんた。どれよ、見せてみなさい!』

『彼氏じゃないんだけど・・・。真美ちゃん、来て・・・』


暫く無線機からガサガサと音がして、歩き出す音がした。

西条が玄関からついに動き出したのだ。


『あなた、まさか・・・』

『私は西条真美です。あなたに捨てられた子供です』

『どうして真美がここにいるの!?ねぇ、どうして!?佳奈、説明しなさいよ!』


パニックに陥っている母親の声が聞こえる。

だが、西条はそんな声をも断ち切るような声で言い放った。


『私は!私はずっとあなたを恨んでいました。そして佳奈ちゃんも恨んでいました!佳奈ちゃんはいつだってあなたのことを話すときは幸せそうな顔をしていました!だから、だから!どうして私だけ捨てられたんだろうって。どうして私は愛されなかったんだろうって。どうして私だけ、私だけ・・・』


無線機からはただただ西条の嗚咽が聞こえてきた。