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Re: あの星を探しに。(ラノベ風) 参照1000突破\(゜ロ\)( ( No.203 )
日時: 2013/05/04 17:38
名前: 華憐 (ID: exZtdiuL)

『真美、放してっ!放しなさいっよ!』


南の母親の悲痛な叫びが、無線機から漏れ出している。


「いやぁ、南の母親、どうしてそんなに追いつめられてるんだろうねぇ〜?」


凛が手を頭の後ろで組みながら、間延びした口調で俺に尋ねてきた。


「あのなぁー、お前、もうちょっと状況を考えろ。そんなのんきにやってるような場面じゃないだろ?」

「尤もだよ。儷の言う通りさ」

「じゃあなんでそんなことすんだよ?」

「…え?そんなの決まってるじゃんか。空気を重くしないためさ」

「…は?この状況下において空気のことについて考えてんの、お前だけじゃねぇーの?」

「もう、儷は冷たいなぁ。そうじゃなくて、重い空気は絶対に悪い方向にしかコトを進めさせないんだよ」

「ふ〜ん?ま、なんでもいいけどな」

「なんでもいいのかよ。さっきまで食って掛かってたくせに」

「それは数秒前までの俺。今の俺とは違うんだ」

「気まぐれ野郎だな、儷」

「いいんだ。それよりさっきの話」

「ん?あぁ、南の母親が追いつめられた原因か?」

「そう、それだ」

「俺が思うにだな…」

「きっと南のお母様は、会社から酷く期待されていたんだと思います」

「亮!?」「亮じゃん!」

「今、俺のセリフ盗っただろ!」

「え?僕、儷様と同じことを考えてたんですか!やばっ!超嬉しいんですけど!」

「それをゲームしながら言われてもなぁ」


俺は溜め息を吐きながら、亮が手に持っている、PFPを見る。


「僕はゲームを持っているからこそ僕ですから」

「それ、間違ってるぞ〜」

「え!?」

「何今更、驚きました、みたいな顔してんだよ」

「だって僕の生き方を批判してくれたのは儷様だけですから!」

「批判してくれた、って、それを待ってたみたいな言い方だな」

「ええ、勿論ですとも!待ってました!」

「待ってたのか。本当、お前って変わった奴だよなぁ。まぁ、いい。そんなことより、さっきの推測、お前はどこから導き出したんだ?」

「会話と、僕が持ってる情報からです」

「会話?あぁ、無線機でさっきし喋ってたことか」

「はい。南のお母様の話していたことからは、色々な人からの理想を押し付けられて、それを自分が全部叶えるのは疲れた、という風な印象を受けました。それに、情報屋から買った情報によりますと、南のお母様は相当頭のキレが良く、仕事もかなりできる、バリバリのキャリアウーマンだったようです。おまけに美人なので、職場でも人気なんだそうです」

「その情報屋、そんなところまで知ってんのかよ。怖いな。一体亮はそんな情報、何を代価にして手に入れたんだ?」

「え?儷様と一度デートさせる、というお約束で…!」

「俺かい!しかも女なのかい!」

「いいえ、男性です」


え?なんだって?

俺の聞き間違えかなぁ?

ダンセイ、だって?


「ダンセイってあの”男性”だよな?」

「はい、あの”男性”です」

「歳は?」

「48歳です」

「もう。訳分かんねーよ!」

「でも、とても好い方なので、大丈夫だと思いますよ?」

「好い方、と言われてもなぁ。俺は男性とデートする趣味はないんだが?」

「そうですか、それは困りましたね…。変わりに誰を用意しましょうか?…あ!斉藤先輩なんていかがでしょう?超美人ですし!」

「お前は殺されたいのか!」


俺はそう言って、亮の頭を軽く叩く。


「え。何でそうなるんですか?」

「だって、あの斉藤先…」

「れーくん、私を呼びましたか?」

「あ、いえ!なんでも、なんでもありませーん。ちょっと亮とゲームのキャラクターの話を…」

「はぁ、そうですか。まぁ、ゲームの話はほどほどにしてくださいよ?じゃないと、亮くんの頭を、あ、間違えました。亮くんのそのゲーム機を真っ二つにしますよ?」


えぇ!?

今、どんな間違えたしたの?

普通、頭とゲーム機を言い間違える!?

絶対、頭をかち割ろうと、斉藤先輩思ってたよね?

本当、怖いわ。

要危険人物だわ。

人類の敵だぁ!!!


「す、すいません」


俺は心の中で叫びながらも苦笑いを浮かべる。

すると、斉藤先輩は満足したのか、「美紀ちゃーん!」と呼びながら、神谷先輩の方へと向かっていった。


「ふー。命拾いしたぜ。っな?亮もわかっただろ?」

「…美しい」

「は?」

「だから、美しいと言ってるんです!」

「誰のことを?」

「斉藤先輩のことを、ですよ!」

「あぁ、確かに綺麗だとは思うが…」

「そうじゃなくて、僕、斉藤先輩のコト、好きになっちゃったって、言ってるんです!」

「はぁ————!?」


俺は思わず大声を張り上げてしまった。

勿論、先ほどの会話からどこに好きになる要素があったのか、ということからの驚きでもあるが、一番はなぜこの緊迫した状況で、恋になんか落ちるのか、ということだった。