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Re: あの星を探しに。(ラノベ風) 参照1000突破\(゜ロ\)( ( No.206 )
日時: 2013/05/05 11:02
名前: 華憐 (ID: exZtdiuL)

—10分後—

「借りてきたぞー!」


凛が青いビニールシートを両手に抱えながら、戻ってきた。


「凛くん!」


美香が心底安心した、というような顔をして、凛に駆け寄った。


「篠原、もう大丈夫だぞ!これを皆で広げて、南の家の真下へ持っていくんだ」

「なるほど!それで佳奈のお母さんを救うのね!」

「そうだ。よし、早くやろう」


そう言って、凛がビニールシートを広げだした。

俺や美香、柊や亮もそれを手伝った。


「よし、広げられたな?」

「おう。完璧だ」

「それじゃあ、向こうへ移動しよう」


そう言って、皆でビニールシートの端を持ちながら南の家の下まで大移動した。

そして、移動し終わった後はただただ俺たちは人が落ちてこないのを祈っていた。

そんな折、無線機から再び緊迫した声が聞こえてきた。


『そんな馬鹿な真似、やめるんだ!』

『煩い!あんた、佳奈の先輩だかなんだか知らないけど、あたしとは関係ないでしょ!?ほっといてよ!』

『関係ある!私の大事な後輩が困っているんだ!助けないわけにはいかないだろう!?』

『神谷先輩、もう大丈夫です。私の所為です…。巻き込んでしまってすみません』

『南!何故そこで謝る!?お前は何一つ悪くない!』

『違います!私がお母さんに迷惑ばかりかけるから。私が悪い子だから…』


南の泣きじゃくったような声が聞こえる。

南だって、きっと苦しいんだ。


『馬鹿!そんなはずがないだろう?南はいつでも笑顔で私たちを元気づけてくれた!お前の笑顔でどれだけの人が救われたと思っている!?少なからずとも、私はお前に救われた身だ!』

『先輩…』

『だから、南。自分をそう責めるな』

『はい…』


おぉ!さすが神谷先輩。

南の心の闇を薙ぎ払ってしまった!

やはり先輩は先輩だなぁ。


そんな関心をしていると、一番恐れていた展開がやってきてしまった。


『あははあはははは』

『何が可笑しい?』

『ほんとう、くだらないわね。あんた無理して佳奈を褒めなくていいのよ?』

『無理してなどいない!真実を口にしたまでだ』

『真実?佳奈があんたたちを救ったって言う?本当笑えるわ』


無線機から狂ったような南の母親の笑い声が聞こえる。

すると、そんな声を一括するかのように、ずっと黙っていた安藤先輩の声が響いた。


『あんた…最低だよ。南がお前のこと、どんだけ思ってたか知ってんのか?どれだけ気遣ってたのか知ってるか?そんなのも知らないで南を罵んな!これ以上、南を罵るようなら俺がお前をここから突き落としてやるよ』


安藤先輩!

すっごくカッコイイこと言ってますけど…それって犯罪では?


『ふざけないで!あんたに落とされるくらいなら自分で落ちるわ!』


無線機からその声が聞こえた瞬間、俺たちが見上げた先から人が落ちてきた。

その人というのは南の母親だった。


「皆、しっかりとビニールシートの端を持て!間違っても手を滑らすな!南のお母さん、救うぞ!」


俺はそう言って、気合を入れて、ビニールシートの端を持った。

すると、間もなくしてビニールシートの中央に人が落ちてきた。

そしてなんとか支えることに成功し、南の母親を救うことができた。


「…やった。やったのか、俺たち?」


凛がこちらを見ながら、震えた声でそう言う。

俺は凛の目をしっかりと見ながら


「あぁ、そうさ!俺たちは南の母さんを救ったんだ!」


と言った。

すると、ビニールを持っていた1年生皆は一斉に飛び上がって喜んだ。


「やった!あたし達、人を助けちゃった!」

「私、人、助けたの、初めて」

「俺たちやったぞ!ヒーローだ!」

「凛の言うとおりだ!」

「儷様どうしましょ!?僕、やりました——!」


そんな時に、緊迫したような子で、2年生組が現れた。


「南の母親は!?」

「大丈夫ですよ!俺たちが受け止めました!」


俺がそう言いながら、ビニールシートの上で気を失っている南の母親を指差した。


「そうか。それはよかった。取り敢えず、救急車に連絡だな。奈々、電話だ」

「はい、美紀ちゃん!」


そう言って、斉藤先輩がポケットから自分のスマートフォンを取り出す。


「…あ、もしもし。救急をお願いしたいんですが。はい。場所は…」


神谷先輩が電話している間に、俺は安藤先輩の所へと向かった。


「先輩!」

「おぉ、新人くん。どうしたんだ?」

「いやぁ、あの時のセリフ、格好よかったですよ!」

「そうか〜。お前にはそう思えたか」

「どうしたんですか?」

「いや、実は俺、あれ言ったとき、内心、焦ってたんだよなー」

「え…?」

「だって、もし、南ズマザーが自分で落ちてくれなかったら、俺が落とす羽目になってただろ?そりゃあ、犯罪になるし、困っちゃうな—、なんて」


本当、この先輩…どこまでも抜けてやがる!


「そ、そうですか」


俺はそう言ってそそくさとその場から離れた。


本当にどいつもこいつも緊張感がねーよな!


そんな苛立ちを覚えながら…。