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Re: あの星を探しに。(ラノベ風) 参照1000突破\(゜ロ\)( ( No.208 )
日時: 2013/05/06 09:20
名前: 華憐 (ID: exZtdiuL)

町中に鳴り響くサイレン。

何事か、と集まってくる野次馬。

担架に乗せられていく、40代前半の女性。

それを見守る俺たち星研部。

そして、母に付き添って救急車に乗り込む南佳奈…。


今回の事件でどれもこれも”現実”なんだ、と身に染みた。


「なぁ、儷」

「なんだ?凛」

「いや、俺たち、南を救えたのかな、と思ってさ?」

「あぁ、そのことか。さぁ、どうだろうな。あとは南の母さんにどれだけ俺たちの心が届いたかどうかで決まる。まだ誰にも分からない」

「…そっか。うん、そうだよな。ありがと」

「いいよ」


その言葉を最後に口を噤んだ俺たち。

そして、救急車が再びサイレンを鳴らして立ち去って行くのを見てから俺たち星研部も立ち去った。


—3日後—

俺たちは、部活動を終えた後、南に南の母親が入院中である病院に連れて行ってもらうことにした。

あの一連の出来事のあとなので、多少話しづらいこともあるかもしれないが、ここでいかない限りは事件に終止符を打つことは出来ない。

「…ここか?」

神谷先輩の少し緊張した声が聞こえる。

そんな声に南はふんわりとほほ笑みながら

「はい、そうです。どうぞ中に入ってください。母も皆さんに会いたがっています」

「わかった」

神谷先輩は南の言葉を聞いて、少しばかり安心したのか、肩の力を抜いて、扉に手を掛け、一気に開け放った。
そして、神谷先輩が先陣を切って、病室へと足を踏み入れた。
俺たちはと言うと、それに倣ってぞろぞろと病室へと入って行った。
最後に入ってきたのは南で、皆が病室に入るのを確認すると、扉を閉めた。

「皆さん、久しぶり、ですね」

窓から飛び降りた時とは全く別人のような南の母親が出迎えてくれた。

「お久しぶりです。先日は失礼なことを…」

「いいのよ。あれはあたしが悪かったわ。自我を見失ってた。…あれから暫く考えてみたの。自分がしてきた行いについて。そりゃあ、もう自分の頭をぶっ飛ばしたくなったわ」

そう言って小さく笑った南の母親。
俺たちはそれを何も言わずに見ている。

「でもね、気付いたの。それじゃあ、今までのあたしと変わらないって。今までのあたしはね、たぶん、自分の嫌いな所、醜いところを受け入れることを嫌っていたの。だから、狂っちゃったんだわ。だからね、あたしはこれから自分のすべてを受け入れるようにするの。…この結論に達することが出来たのはあなたたちのお蔭よ。それに佳奈も。本当にありがとう」

そう言って、涙をこぼした南の母親。
俺はその姿に胸を強く打たれた。

人は、変わって行けるんだと。
たとえ一度道を踏み外そうとも、周りの人や自分の力でもう一度戻ることが出来ると…。

生まれて初めて俺は心から感動したかもしれない。
これこそが人間と人間、親と子が結ぶ”絆”の正体だと思った。

「南」
「なんでしょう、神谷先輩?」
「じっくりとお母さんと話がしたいだろう」
「え、そんな悪いですよ!私が皆さんをお送りしないと…!」
「大丈夫だ。もしよからぬものが襲ってきてもすべて奈々が倒してくれる」

はい、その通りです。
仰る通りです、先輩。
斉藤先輩なら殺しかねませんが。

「…そうですか」
「それじゃあ、ごゆっくり。私たちはこれで」

そう言って、神谷先輩は身をひるがえして、病室を後にした。
再び俺たちもそれに続いて病室を後にした。